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「……ほう、それでドジを直したいと？」
『うん……完全に直すのは無理だとしても、少しでも直したいんだ。』
昼休み、図書室で収集したデータの確認をしていたところにAはやって来た。何やら深刻そうな顔をしていたので何事かと思えば、ドジを直したい、ということらしい。
確かに先日起きたというタオルの山崩しボールぶちまけ事件はひどいとは思うが、それ以上のドジを踏んできているAがこれを切っ掛けに、とは少々考えがたい。
「さては、精市に何か言われたか？」
『ううん、精市くんは無理して背伸びしなくていいって言ってくれたんだ。けど、やっぱり僕って精市くんの負担になってるなって思ったから…』
病み上がりの精市を本気で心配しているからこそ、負担になりたくないという考えが生まれたのだろう。
しかし、精市が毎日Aの世話を楽しそうにやっているのを見ると、今のままでいたほうがいいのではないかと思う。
『ということで蓮二くん、ドジは一体どうしたら直るのか、教えてください！』
「そうだな…先のことを考えて行動するといい。」
『ふむふむ…早速やってみるね！』
『ありがとう！』とお礼を告げて走り去るあいつが(案の定)何もないところで転けたのを見て、ドジを直すことがどれ程難しいかを悟った。
*
「廊下を走るなど…全く、たるんどる！」
『ごめんなさい！！』
真田に怒られるAを見て、俺の隣にいるジャッカルが「またやってるな…」と呟いた。
朝から『僕、絶対にドジを直すから！』と気合いを入れていたAが、廊下を全速力で走って転けた挙げ句風紀委員長である真田に目撃され叱られている、というのが今の状況だ。
先日のタオルの山崩しボールぶちまけ事件以来、いつもよりドジを踏むようになったAを、テニス部員(特に幸村くんと真田)は心配していた。
当の本人は真面目にドジを直そうと躍起になっていて、心配する俺たちには気づいてもいないようだ。
(本当に大丈夫かよ…)
(そういや昨日の昼休みに柳にアドバイスもらったって言ってたな)
(絶対に原因それだろい)
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作者名：海道蓮 | 作成日時：2019年5月5日 11時
