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「それにしても…毎日説教されて、嫌じゃないのか?」


俺は絶対嫌だな、と思いながら訊いてみると、Aは突っ伏した顔を少し上げた。



『うーん、お説教は恐いから嫌だけど、精市くんが僕のためを思って言ってくれてるって知ってるから。』


えへへ、笑ったAは可愛かった。いやいつも可愛いが、更に、という意味でだ。



「本当に母と娘みてぇだな…」

『うん、みんなそう言うよ。それに僕、小さいときに一度だけ、精市くんのことママって呼んだことがあるんだけどね…』

「ブッ」




あったのかよ。



いやまああんだけ世話焼かれてたら幸村くんのことをママと呼んでもおかしくないけども。



『そしたら精市くん、怒ったんだよ』

「怒ったのかよ!!」



あんた母親みたいなことして自覚なかったのかよ、と心の中で幸村くんにツッコミをいれた。



『うん。親だとずっと一緒にいれないからって。俺はずっとAと一緒にいたいから、お嫁さんになってって…』

「幸村くん、可愛いところあったんだな…」




ていうか男と男は結婚できないし、両方とも女みてぇな顔してるから尚更複雑になるだろうと安易に予想がつく。







部長の意外な一面を知ったところでチャイムが鳴り、今日も面倒臭い授業が始まった。



__が、さっき聞いた話が衝撃的すぎて、授業内容が全然頭に入らない。いつものことじゃねぇからな。お菓子のことばっかり考えてるわけじゃねぇからな。



誰かに言い訳をしていると、隣の席から四つ折りになったノートの端切れが飛んできた。視線を隣に向けると、Aがほんの少し口角を上げて笑っているのが見えた。

教師の目を気にしながらそれを開くと、女子みたいな可愛い字でこう書いてあった。




【このことは精市くんには内緒だよ】




きゅんってした。今きゅんってしたぞ俺の心臓。



幸村くんには絶対バレないようにしよう、と心に決めた瞬間だった。




(バレたら絶対殺される…!)

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作者名:海道蓮 | 作成日時:2019年5月5日 11時

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