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｢……信ちゃんのおしゃべり｣

｢そう言うなって。ヒナなりに心配しとるって事やろ｣



悪夢もそのせいか、って
詳しくは知らんけど大変やったな、って



私が引っ越す＝彼氏と別れた、という
いつもの流れを知っているきみくんは



｢えらいイケメンと住んでるらしいやん｣



次こそええ男見つけなあかんで、って
保護者みたいな優しさで微笑む。



｢イケメン？あの人が？｣

｢ヒナがそう言うとったで｣



ボサボサの髪とスウェットで朝からお盛ん、ついでに無職。
見た目がイケメンでも中身に問題ありますけど。



とも言えないまま
うん、まぁ、そうかなぁ
なんて適当な返事をしながら



いい男を見つけるも何も
あの人は単なる同居人で



次の恋の相手になるなんて
ありえないと今朝の出来事を思い出してたら



｢……あんまりヒナに心配かけんなよ｣



きみくんの声が一段と優しくそう言って
そろそろ仕事するわ、と今度こそ席に戻っていく。



きみくんは私の想いを知っている。



想いを抱えたまま別の恋を探してる私を
否定はしないけど時々やんわりと釘を刺すんだ。



心配かけんなよ、は
迷惑かけんなよ、と同じ意味。



｢分かってる……｣



きみくんの姿が見えなくなってから
自分に言い聞かせるように呟いて



少し冷めたコーヒーを飲み干すと
まるで私の今の気分そのものみたいだ。



お砂糖を入れ忘れたコーヒーの苦味が口の中に残った。

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