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章ちゃん、って甘い声で。
彼女が章大のシャツの裾を引っ張るのが見えたから。
もう、タイムリミット。
「ありがと。じゃあね」
彼女みたいに愛想よく笑うことも出来なくて。
そっけない言葉で無理やり会話を終わらせて。
2人にくるりと背を向けて今閉めたばかりの玄関ドアに手を掛けた。
早く、1秒でも早く。
章大の優しさに泣いてしまう前に。
家に、自分の部屋に、隠れてしまいたいのに。
「・・・ちょっと待っといて」
章大のその言葉は魔法みたいだ。
私の願いを、いつだって、何だって叶えてくれたのに。
「新発売らしいで」
背中でガサガサとコンビニ袋の音がして。
差し出されたのは、見たことのないパッケージのコーヒー。
「・・・章大、朝ご飯あるの？」
「オレの朝ごはんより、泣きそうな顔しとるコの心配が先」
何があったんか分からんけど。
好きなもん食べて元気出してな、って。
ボサボサの髪を撫でてくれる手も優しいのに。
「ごめん、お待たせ」
「ううん、大丈夫」
待っといて、は私だけの特別じゃないんだ。
大事な彼女にも、隣に住む幼なじみにも、それは同じように優しく響いて。
いくら待っても。
私が手に入れられるのは、章大の優しさだけだって。
愛おしそうな眼差しも
しっかりと繋がれた指も
お互いの名前を呼ぶ優しい声も
それは全部、彼女だけが手に出来るものだって。
隣の家に2人の声が消えていくまで、自分に言い聞かせた。
fin.
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おふ - 丸の話の長編ってありますか？？ (2019年12月20日 22時) (
レス) id: 42669487d6 (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん(プロフ) - 村上くんのファンとして、とても大好きな作品の一つです。久しぶりのお話の更新、とても嬉しかったです、ありがとうございます！切ないですが、一つ一つの言葉がとても綺麗で…何回読んでも泣いてしまいます笑笑またいつか、お話が更新されるのを待っています！！ (2019年12月14日 3時) (レス) id: 75cb21f7f0 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - 素敵なお話の数々をありがとうございました！青さんのお話がやはり好きです。青さんらしくて。天国に行った信ちゃんとその彼女さんと丸山さんのお話、まだまだ続くのかなぁって思ったけど…終わりなんですね。まだまだ読みたいって思いましたが…残念。 (2019年12月11日 1時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
nokko(プロフ) - 信ちゃんのお話、とっても切なかったのですが、心温まるハートフルな話でとても感動しました。マルちゃんの優しさにも心打たれました。あきらさんの描く、少し儚いお話が大好きです、！これからもひっそりと楽しませていただきます…（笑） (2019年5月2日 15時) (レス) id: 079b72fef4 (このIDを非表示/違反報告)
あきら(プロフ) - ゆんゆさん» 残酷・・・のつもりはなかったんですけどね(^^;; 空から恋人を見守る人、恋人を忘れずにいる人、その全てを知った上で恋をする人。その想いの全てに間違いも正解もないけれど、叶わない想いもまた【恋】なのだと思います。 (2017年11月6日 21時) (レス) id: e9c7617437 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あきら
| 作成日時：2016年4月30日 18時
