恋味ドロップス(緑)

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確かにほどよく飲んでます。
ほろ酔い気分でちょっとフワフワしてます。
でもその勢いで手をつなぐかって言われたらそれは無理。



「大丈夫です、1人で帰れますから」

「そういう意味ちゃうやん」



知ってます。
分かってます。
酔っ払いを送り届けるんじゃなくて。
恋愛感情の手をつなぎたい、って意味くらい。



「駅まで」



ん、ってもう1回手を差し出されるけど。
駅までとか家までとか距離の問題じゃなくて。



私はまだ大倉さんのことを何も知らない。
だから簡単に手をつないで期待を持たせるようなことなんて出来ない。



「あの、大倉さん・・・私が章大さんのことを気になってたの知ってたんですか」



大倉さんの言葉を聞こえなかったフリをして。
大倉さんの差し出した手を見ないフリをして。



話題を変えながらゆっくり歩き出すと大倉さんは何も言わずに手を引っ込めて、さりげなく車道側を歩いてくれる。



「初日にいきなり章大さん、て名前で呼んだやん？」

「そうですね・・・」

「いきなりあんな呼び方すんの、告白と同じ威力あるって」

「でも章大さんには効果がなかったですけどね」

「ヤスはずっと山田さんが好きやったからな。でも小笠原さんが章大さんって呼んだの、違う効果はあったで？」

「違う効果って？」



タイミングを見計らったように赤になった歩行者信号。
立ち止まった大倉さんは私の手をそっと握って。



「オレもあんな風に呼ばれたいな、って」



まっすぐに、私を見つめて言った。

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