アンバランスロマンス(緑)

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結局また金庫を開けて、パソコンの電源を入れて伝票入力をやってる間。



大倉は私の隣の空いた席に座ってスマホをいじってて。



「精算終わったんなら仕事に戻れば？」

「今日そんな忙しないから大丈夫。Aは終わり？」

「今度こそ終わり！もう帰るんだから」

「んじゃ、行こか」



机の下に置いてあるパンプスに履き替えて鞄を持った私の腕は、大倉にがっちりと掴まれた。



「何すんの、離してよ」

「しゃあないから奢ったるわ」

「何？」

「ヤスももうすぐ終わるって言うてるから。
3人で飲み行こ」



異業種交流会なんてやめとき、って。
腕を掴んでた大倉の手が子供をあやすみたいに私の頭をポンと撫でた。



先月も、その前も。
ロクな出会いはなくて。
出会いの場でも人気があるのは若くて可愛い子ばっかりで。



名刺に印刷されてる名ばかりの経理主任って肩書きが邪魔をするのか、アラサー女子はそんな華やかな場所でもどうしてか売れ残るから。



そんな私の愚痴を大倉はもう一人の同期、ヤスくんと一緒に毎月聞いてくれる。



「・・・本当に大倉の奢り？」

「今日だけな」

「じゃあ、行く」



"えー、そんなぁ〜。奢ってもらうなんて悪いですよぉ"



"でも大倉さんが行くなら是非ご一緒したいですぅ"



突然大倉が新入社員ちゃんみたいな声で
体をくねらせて。



「可愛く言わな失敗するって先月も教えたで？」

「そんなこと出来るわけないでしょ！」

「な、Aには無理やろ？
だから異業種交流会なんて行くのやめとき」



思わずドキッとするようなイケメンスマイルに油断した私のおでこを、大倉の指先が軽く弾いた。

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