恋泥棒(緑) 4

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普段、自分の背が高いから女より低い目線になるってことがあんまりないけど。



お粥出来ましたよ、の声に顔をあげたら斜め上に心配そうにこっちを見とる木村あやの顔があって。



そういえばこんな風に見上げるなんて初めてで。
見る角度が変わっただけで何でかドキドキするってことをキッチンの隅で座り込んで初めて知る。



おかしい。
今日は色んなことがおかしい。



熱のせいなん？
それとも2人きりやから？



何となく会社とは違う木村あやの雰囲気とか、初めて見る料理するとことか、そんな些細なことにいちいち反応する自分がいる。



ちょっと塩を入れすぎたお粥も。
食後に出されたうさぎの形したリンゴも。
風邪薬と一緒に渡されたのが水やなくて白湯だった気遣いも。



そんなん全部が風邪とは違う熱になって身体中を駆け巡る。



「これも貼っときますね」



薬を飲み終わったらおでこに冷たいシート貼り付けられて。



「大倉さん、子供みたい」



木村あやはベッドに横になったオレを見て笑った。



「・・・ありがと」

「いえ。仕事が忙しいって言ってた錦戸さんの代理で来ただけですから」



そう言うと腕時計に目をやってそろそろ失礼します、って立ち上がった。



「一昨日・・・ごめん」



帰る前にどうしてもそれだけは言いたくて。



そう言ったらまだこの部屋に引き止めておけるような気がして。



とっさに毛布から出した右手で木村あやの服の裾をつかまえた。



「・・・その話はまた違う日に」



それやのにこっちを見ないで木村あやが小さい声でそんなん言うから。



「待って」



ベッドから飛び起きて抱きしめる力だけは、かろうじて残っとった。

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