・ ページ4
◆
自分は規則に従って仕事をしようとしているだけなのに、何故かいつもこの女に邪魔をされる。ゾムが糾弾したくなるのも仕方のない事であった。
「なんのことなんのこと？仲間だった人を殺せなかったこと？」
「分かってんなら止めろやアホがっ」
「えーーーー！！やっだもーーん！！えーい！！」
ゾムが怒りのまま掴み掛かるも、Aはきゃらきゃらと無邪気な笑みを溢したまま逆にゾムの体を放り投げる。そのまま打ち付けられるのかと強張ったゾムの体だが、投げ出した張本人にキャッチされ優しく抱えられて＿＿所謂お姫様抱っこ＿＿をされると、更なる怒りが露出して見える肌という肌を真っ赤にさせた。
「マジ……！！お前いつか殺す……ッ！！」
「えーーっ！！やってみてやってみてよー！！」
怒って暴れ出したゾムを御そうと、Aはその細腕で大男を抱えたまま、ダンスの様な足取りでクルクルと回った。さながら社交ダンス人殺し級プロ。
踊り踊って今度こそ本当にゾムを地面に放り出して馬乗りになったAは、そのそばかすが散る肌に自分の髪が触れるほど、誰かが少し背中を押したらキスしてしまいそうなぐらいの近さで語りかける。
「きみにはできないよー……」
その言葉が発された途端、戦争でもしているんじゃないかというぐらいの喧騒だった筈が、揺れる髪先がさりさりと音を立てるのすら耳に入る静寂が訪れた。そのくすぐったい音と感触に背筋がゾワリと侵食される様な感覚に支配され動けなくなっていたゾムは、慌ててAを蹴り上げようとして、次の瞬間には逃げられていた。
ゾムは他者から見ると意味不明な様に見えて、その実理屈で動いている。しかしたった今目の前から逃亡した女＿＿Aは、ゾムからすれば「本当に頭がおかしい人間」であった。
彼女の中の法則は分からない。それはゾムにとっても他の誰にとってもそうで、行動原理は彼女自身以外にとって不明なままだ。普段からゾムにぴったり張り付いているならまだしも、彼女はゾムが裏切り者を殺す時にだけ必ず現れてこうして獲物を奪って行く。何度上に抗議しても、彼女を止める事ができなくて済まないの一点張りでますます意味が分からない。
だからゾムは、自分なんかよりAの方がよっぽど頭がおかしいし、自分はまともだと思っているのだ。
「こんッのキチガイ女ァ！！」
「私、優しいちゃんだもーん！！」
因みに、ゾムが今まで殺した��元��仲間の人数はゼロ人である。
◆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：大痕ピアス | 作成日時：2025年1月12日 17時
