きみのほうがよっぽど/zm ページ3
◆
「お前ッ……頭おかしいのか！？」
「は？」
自分に向けられたその言葉に辟易する。それは何度も向けられたが故の嫌悪ではなく、己はそうでないと否定の意が混じった怒りの発露だった。
おかしい？俺が？
「俺が遊びに使うのは上から使って良いって言われたヤツだけやし」
じゃなきゃ怒られる。上から怒られるのはゾムにとっても避けたい事態だ。
「上が使って良いって言うのは疑いがあるヤツか見込みあるヤツの2択だけや」
ボロ出させるためにしても対応を鍛えるにしても、疲れさせるのは必要だから当然。上の理念をしっかりと理解した上での行動だ。ゾムには相手が何故ここで安心した顔をするのか理解できなかった。
「で、俺が処理すんのは裏切り者だけやし、俺が今お前にナイフ突きつけてるんはお前が裏切り者だからやろ。ちゃうんか？」
この状況から助かるとでも思っていたのだろうか、先程廊下を歩いていたら急に首元にナイフを突きつけられた男は、全ての言葉が図星なのか顔を青くして震えるばかりである。
「何や俺おかしい事何もしてへんやろ、違うか？」
「ち、ちが、違いま、せんっ」
死への恐怖から鸚鵡返ししかできなくなっている男は、逃げる隙すら探せないまま、そもそも与えられないまま、壁に張り付いた背中が冷や汗で濡れて嫌な感触がする事だけを思考していた。そのまま数秒足らずでゾムがナイフを振り上げるモーションに入る。死を悟った男は世界の全てがスローモーションに見え、自分目掛けて下される凶刃の輝きから目が離せなかった。
「頭おかしいって言うんはなぁ、」
「すとっぴーーーーーーん！！！！」
次の瞬間、紡がれる筈だった次の言葉は、大声と共に下された衝撃で呼吸ごと喉の奥に引っ込んで消えた。そして男に振り下ろされ鮮血を咲かす予定であったナイフもどこか遠くに消えた＿＿のではなく、突如現れた女の手に握られていた。
「アハハッ！！得物もーらいっ」
「あっ、お前待っ＿＿」
逃げ出そうとしていた男の脳天に突き刺さるのは、つい先程までゾムが握っていたナイフだった。グシャリと突き刺したそれが引き抜かれ、男は力無く床に倒れ伏す。
「ゾムくんゾムくん、観光客は私が片付けるんだよー！！」
「Aッ……これ何回目や」
……こうしてターゲットを��横取り��されたのは。
◆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：大痕ピアス | 作成日時：2025年1月12日 17時
