価値観の違い ページ5
「父に、っ、殺されたんです」
口がガクガクと震えて、上手く言葉が紡げない。
父、という言葉を出した瞬間に空気が冷え込んだ。
目の前の男の雰囲気が、ガラリと180度変わった瞬間だった。
「あ、.......の?」
「あぁ、すみません。柄にもなく取り乱してしまいました。失敬失敬。.......それ本当に父親ですか?
実の子を殺すなど、有り得ませんよ。」
「ホント、そうですよね。
でも、私だけじゃないんですよね。虐待で死んでしまう子供なんて、ざらにいますし。」
.......
「待ってください。え?大丈夫ですか、貴方の世界頭おかしいんじゃないですか?」
「そんなに?」
「そんなにってもんじゃないです。
良いですか?この世界では実の子供に暴力を振るう親などまず、いません。ましてや、殺すなど.......言語道断です。そんなことが起きれば、死刑は免れないでしょうね。
因みに先程のゴミ共、未遂ですから恐らく懲役50年程ですかね。貴方だけでなく、以前からあのような行いをしていたのなら、終身刑、又は死刑になりかねませんが。」
「は?
.......性的暴行って、そんなに重い罪なんですか?」
「逆にこれ以上重い罪ってなんですか?」
「だって、私の住んでた国では無罪になることもありますし、重くても20数年程ですよ?
20年程になると、殺人でもないのに重すぎ、と外野から野次が飛んで来る程で」
「待ってくださいその犯人と野次飛ばしてるヤツら1回死んだ方が宜しいと思います」
ここまで差があるのか。
この国に生まれた人は、幸せなんだなと思ってしまった。
別に、あっちの世界が幸せじゃないとかじゃなくて、ただ、私みたいに虐待されたり襲われたり、そういう人から見たら幸せな世界なんだと、そう思っただけ。
「私ね、海沿いの街に住んでたんです。
幼稚園.......ここではなんて言うんだろう。キンダーガーデン?プレスクール?まぁ、3歳か4歳くらいの頃ですかね。母が病気で他界したんです。
それから、父と2人で暮らすんですけど。
最初は良かったんです。私のために、作ったことも無い料理に励んで、美味しくない料理を不味いって言いながら笑いあいながら食べてました。けど、時間が経つにつれ、食パン1枚置かれてるだけとか、良くてコンビニ弁当でしたね。それでも隣にはまだ、父がいました。
それからしばらく経てば、お金が置かれていたんです。
そこにはもう、父はいませんでした。」
電気の淡い光が映り込むミルクティーに目を落としながら話していた。顔を見るのが少し怖かった。
それでも優しい雰囲気に身を委ねながら話し続けた。
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Ria*(プロフ) - すみませんごめんなさい…。前にしたコメントゆっこさんのことを呼び捨てに…!!わざとじゃないんです、ごめなさい!ゆっこ"さん"です!訂正させてください!! (2020年8月6日 10時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
白玉の星(プロフ) - 速く………………速く………………思い出してほしい…これからも頑張ってください……………… (2020年8月5日 21時) (レス) id: 897ea2c55e (このIDを非表示/違反報告)
ちぃすけ。(プロフ) - 全編見たとき泣きました…( ; ; )この作品が今までで一番好きです!!更新ものすごく楽しみにしてます!!頑張ってください! (2020年8月5日 20時) (レス) id: 0f6c0c9d97 (このIDを非表示/違反報告)
Ria*(プロフ) - 続編心待ちにしてました!ゆっこの作品大好きです!これからも楽しみにしています!! (2020年8月5日 18時) (レス) id: 33e95337be (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 名前変換させてほしい… (2020年8月5日 12時) (レス) id: ed99c8170d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっこ | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/novel/series/1297564
作成日時:2020年8月4日 20時