瓜田李下-カデンリカ ページ43
『(なんだ、やっぱり気づいてた)』
半信半疑で疑っていたAは、残念だとため息をついた。
ゾロの目が、ゆっくりとAの口を睨む。何を話すか、何を語るのか。
Aの言い訳を期待すると、ゾロは刀を握り直そうと指の力を緩めた。
『それだけで疑うなよ』
「ッ!!?」
ドンッと辺りに地響きが立つと、ゾロは咄嗟に瞑った瞼を開けた。
こちらを見下ろす男が……Aが、無表情で笑い声をあげていた。
『今どんな気持ちだ？ なァ、聞かせてくれよ』
「何が…起こった……」
背中に感じた衝撃が痛みとなって体を巡り、心臓の鼓動が速さを増した。
一瞬で立場を逆転させられたゾロは、意味がわからないという顔をAに向ける。油断というものは、例えダイヤモンドの盾を構えていても防げない剣であり、この世に存在するすべての生物に当てはまる“弱点”だ。
汗が溜まった手で刀を握り直そうとしたゾロは、その隙を突かれた。いや、隙などなくてもAはゾロを見下ろすことが出来ていた。
腕を折られる前から自分がこれからどうなるのかを察していたAは、ふと思いついたのだ。
『そうだ、ロロノアの表情を崩してやろう』──と。
彼の企てを手伝い、これから数週間ほど晩酌ができなくなることを考えながらも腕を折らせてあげたAは、ニコニコとゾロを見下ろす。
大の字で寝っ転がるゾロの腹の上へ体重を載せ、抵抗できないように両腕を鉄板が仕込まれた靴底で地面に押し付けると、Aは刀を3本とも投げ捨てた。
冷たい地面に刀が落ちる音を聞いたゾロは、怒りでAをぶち飛ばそうとしていたことは言うまでもない。
「……殺すなら殺せ」
『ヤダね。あんたを殺せば、おれはルフィが殺されちまう』
「正直に話せば殺されねェさ。おれが殺そうとしてきたから反撃した……ってな。正当防衛だ、ちゃんと成立するぜ」
『ハハッ、残念だったな。あいつは正当防衛なんて言葉知らない』
「……なんで何もしない」
腹から降りるAに、「腕を折ったんだぜ、おれは」とゾロは言った。
『おれも悪かったよ、疑われるようなことをしちまった。日頃の行いとでも思っとくよ』
「A……」
さ、戻ろうぜ、と来た道を戻るAは、心の中で呟いた。
『(危ねェ……話し合いで解決しなかったらマジで殺るとこだったァ……)』
Aの汗が、地面へ染み込む。
革靴に仕込んでいた刃が、密かに光った。
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月22日 19時
