【wrwrd】我々アングラ世界に生きし者

８ ページ9

ゴトン！と言う音がして目を覚ます。覚醒しきっていない頭を起こしながら目を開ければ、目の前には化粧箱を落として謝っている女の子がいた。

「大丈夫……？」
「ごめんね、起こしちゃった。寝てて良いよ、Aは今日休みでしょ」
「ん……、いや、起きるよ……。今日は買い出し行くから」

同室の子が化粧を再開しているのを横目に、服を着替える。いつものバニー服ではなく、質素なボロ布に。
バニー服に侵食されたクローゼットの中に入っている私服はこれとさっき脱いだばかりの服だけだ。

「そういえば昨日チップもらったんだっけ？いくら？」
「ん？六十」
「六十かぁ、じゃあ三十渡すから、避妊薬買ってきて」
「はーい」

私は同室の子からもらった三十合わせて、九十枚の札を持って部屋を出る。部屋を出れば既にバニー服に身を包んだ女の子が数十人わちゃわちゃと廊下に立っていて、心の中で頑張れ、とエールを送る。

私を含む女の子達は、全員裏カジノが経営している寮で暮らしている。食事は出るし雨風も凌げるしお風呂も入れる。この裏通りでこれ以上ない良い物件だ。
一歩出れば闇市場が死ぬほど並んでいる。
ヤバイ薬なんて当たり前に売っている。なんなら安いくらいだ。吸えば一発で天国にイけたり、えっちする時に使えば二人ともキまり過ぎて三日は動けるとか。逆に普通の薬の方が高い。

「避妊薬ちょーだい」
「六十枚」
「ぼったくり過ぎだよおっちゃん、こないだ三十枚だったでしょ」
「値上がりだよ。最近はおぎょーぎの良い男が増えてるからな、天然ゴムの方が売れる」
「ここまで来て何怖がってんだろうね。はい、三十。避妊薬ちょーだい」
「ちっ……」

舌打ちをしながら避妊薬を投げて渡してくる薬屋。たった2錠しか入っていない薬を受け取れば、今度は私の買い物をしに行く。必要なものを購入し、戻ろうとした時、闇市場の屋台が慌てたように店仕舞いを始めた。

「おい、お前も早く入れ！売ったことがバレたら面倒になる」
「何が？」
「ここらへんを取り仕切ってるマフィアが視察に来たんだよ……！」

９→←７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す