8 ページ9
先生に相談すれば、保健室の先生が制服の替えを持っているらしい。そして、何があったかの説明にAさんは職員室に残ることになり、俺はさっさと教室に行けと追い出されてしまった。
俺は仕方なく教室に戻り、暇潰しに携帯を出せば兄さんから何度も着信が来ていたことに気付いた。
『もー!めっちゃ遅刻か!?って思ったんだぞ!』
「ごめんって兄さん……。朝ごはんは作って置いてあるから。……うん、じゃあね。おやすみ」
小さなお小言といつもの会話をする。兄さんは相変わらず心配症だ。小学生の時行方不明になっていたことを未だ引きずっているらしい。もう大きくなったし、柔道も習ってるから大丈夫なのに。
ぴ、と通話を終了させると同時に、扉がガラッと開いた。Aさんがたっていて、既に女子生徒の服になっていた。
「これ、ありがとう。……あ、洗濯した方が良い?」
「いや、俺ん家で洗濯するわ。……今日家に帰るん?」
「……やっぱり、天乃くんも家に帰った方が良いって言う?」
「いや、……その」
思わず視線を逸らした。彼女が家で何をされたかわからないが、ろくな事はされてないだろう。そうじゃなければ、わざわざ俺の家に来るはずがない。俺としては、家に居てくれても全然構わない。きっと兄さんも歓迎してくれるだろう。でも、俺の家は男家族で、母さんもいないから女子が居て良い環境じゃないはずだ。少なくとも、彼女の荷物くらいは取りに行った方がいいんじゃないかなと思う。
「……ねぇ天乃くん」
Aさんが座っている俺に近付き、耳元に口を寄せられた。あまりの近さに、脳が停止する。匂いは確実に俺の家のシャンプーの匂いのはずなのに、少し甘い匂いがした。これ、なんの匂いだ?女子の匂いか!?
「何でもするから、泊めてくれない?」
「何もせんでも泊めるって言うとるやろ!!!!!」
予想以上に大声が出て、俺もAさんも驚いた。
「……怒ってる?」
「怒ってへん…………ほんまごめん……」
428人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽむ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!ランドルせ様の作品はすべて読ませていただいているのですが、今作もグッと来る作品で、泣きました(本当)。素晴らしい作品をありがとうございました!奇跡の方の更新も頑張りすぎず頑張ってください!応援しています! (2021年2月2日 10時) (レス) id: 277b16b527 (このIDを非表示/違反報告)
なのな(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも思うのですが、この後どうなるのか読者に想像させる終わり方がとても好きです…細胞の話、私も聞いたことがあるのですがなるほど、素敵な設定ですね!今作も素晴らしい作品をありがとうございました! (2021年2月2日 7時) (レス) id: cb0e93c590 (このIDを非表示/違反報告)
ランドルせ(プロフ) - つぶしたおもちさん» ただハッピーエンドなのも面白くないかな?と思ったので、切ない部分はなるべく短く書こうとしているのですが、そう言ってくださると嬉しいです!神になれたら良いんですけどね…笑 (2021年2月1日 20時) (レス) id: 8955d1f7f8 (このIDを非表示/違反報告)
ランドルせ(プロフ) - ちびたぬきさん» 全部読んでいただいて嬉しいです〜!いつも通り書きたいものを書きたいだけ書いていくので応援よろしくお願いします! (2021年2月1日 20時) (レス) id: 8955d1f7f8 (このIDを非表示/違反報告)
ランドルせ(プロフ) - ハクさん» コメントありがとうございます!そう言ってくださると嬉しいです〜! (2021年2月1日 20時) (レス) id: 8955d1f7f8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ランドルせ | 作成日時:2021年1月27日 14時