【wrwrd】一晩と言わず泊めてください

１４ ページ15

結局Aさんの両親は警察に逮捕され、俺は兄さんにこっぴどく叱られ、そしてクラスメイトからは心配のLINE通知が入っていた。クラスメイトには明日説明するとだけ返し、電源を落とす。Aさんは兄さんが呼んだ婦警に連れられて警察署にいるが、今夜中には俺らの家に戻ってくるらしい。

兄さんがなんやかんや権力を使って、保護という名目で。実際被害者であるAさんが天乃家に居たいって言うからその意思が尊重されたということもあると思う。兄さんがまた徹夜だ。と笑っていた。

俺は掃除をしていた。使ってない部屋があって、そこをAさんの部屋にしようって話になったのだ。終わる頃に、チャイムが鳴った。玄関を開けると、今度は荷物をちゃんと持ってAさんが立っていて。

「こんばんは、天乃くん」
「おかえり。……で良いんかな？」
「かな？……家出してきたの。だから、泊めてください。今度は、一晩と言わず」
「それ言うのこっちやねんけど。……一晩と言わず泊まってけば良いよ。兄さんも喜ぶし」
「んふふ。なんか、新婚みたいだね」
「えぇ？義両親ならぬ義兄がいるのってどうなん？」
「天乃くんのお兄さんなら良いけどなぁ。面白いし」

そんな冗談を交わしながら、Aさんを家に入れる。Aさんは、昨日とは違って嬉しそうな顔をしていて、見ているこっちがなんだか照れる。

「…………なぁ、さっきの話さ」
「うん？新婚みたいって話？」
「おん。…………ほんまの話にせん？」
「……ちゃんと言って」
「お、俺と付き合って、ください……」

最後の方は最早聞こえてるか不安な声になってしまったけれど。人生初の告白に、顔が熱くなる。ああ、なんでこんなタイミングでやってもうてん……。

「やだ」
「えっ」
「私、天乃くんのこと大好きで付き合いたいなーってずっと思ってたよ？でもね、今はダメ。……少なくとも、天乃くんが私の事襲ってくれるまでは」
「え、は、どういうことやねん……、そういうのは付き合ってから、」
「何がなんでもだめ！」

そう悪戯っぽく笑って、奥の部屋へと向かうAさん。俺は肩落としながら、その後に付いて行った。

最終話→←１３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す