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「しかし、それらも含めてそのような偶然はそう簡単に起こることではありません」
「だが、こと匣開発においてはそれが尋常でなく、頻繁に起きている」
「どういうことだ！？」
「我々はそれを調査しているのです」
考えられるのは本当に運がいいのか、または人為的なものか。人為的って言ったって現実的な考えじゃまずあり得ない。
だって、偶然を引き起こせるのなんてそれこそ神しか僕は知らないから。そう、エンティティさまのような神様だ。
でも、エンティティさまに仕えるまでは、僕は生憎と無神論者でね。穿った見方をしてしまう。神が存在して人を平等に愛するというのなら、戦争だって起こらないはずだ。苦しむことも妬むことも、この世にはないと思ってる。そうじゃなかったから、神なんていないと信じていた。
まあ、今はご覧の通りだけどね。でも、僕を助けてくれた神様はエンティティさまだけだよ。だからこそ、エンティティさまだけが神様として存在しているんじゃないかと思うんだ。
ヒバリさんは自分の匣兵器を見上げる。その視線を追えば、雲のハリネズミに取り込まれて、大空のハリネズミは破壊されていた。
「悲観することはないよ。大空専用の匣も存在するらしい」
僕に近寄ったヒバリさんを見上げて首を傾げると、少し痛いくらいの強さで腕を掴まれる。その目には先の戦闘で燻った熱がちらちらと見え隠れしていた。釣り上がる口角と漏れる吐息。
先ほどまで沢田綱吉に向けられていた殺気が今にも僕を仕留めようと襲いかかってくるのが堪らなくて、頬が上気してしまう。
「やるかい」
「もちろん！」
「行くよ」
急ぐように歩き出すヒバリさんの後ろを跳ねながらついていく。ああ、移動してる時間すら惜しいと感じてしまうのに。
「どこ行くんだ？」
「僕のアジトさ」
「ここでやりゃーいいだろ」
リボーンの言葉に目を瞬かせる。ヒバリさんは眉を顰めていた。
「オレもAの力量が知りてーんだ」
「見せ物じゃないよ」
「そう怒るな、ヒバリ」
うずうずしながらヒバリさんを見上げれば、ため息をつかれる。それからパッと腕を離された。鼻歌を歌いながら霧の中で武器を物色していると、ヒバリさんが口を開く。
「ルールは」
「満足するまでで」
「なんでもあり、だろ？」
「最高ですね！」
ぽんぽんと交わされた会話に、ラル・ミルチが顔を引き攣らせていた。
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作者名：怜
| 作成日時：2022年10月24日 23時
