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分かりやすく不満そうにするヒバリに、Aは苦笑する。しかし、Aはそれ以上話そうとはせず、入江に目を向けた。
「どこか広くて頑丈なとこ、ある?」
「君達のアジトは?」
「あれよりもっと頑丈なとこがいい。これを使わなきゃいけないから」
薬液に目を落とすA。その言葉で訳も分からない薬の効果に思考が持っていかれそうになるが、入江は首を振ってその思考を追い出した。
「メローネ基地が持っていかれた今、君達のアジト以上の頑丈さを持つ建物はないんだ」
「……そう。じゃあ、しばらく僕はいなくなるから」
「ええっ!?なんでそう、」
「頑丈なとこ、ないんでしょ?」
Aが不思議そうに入江を見る。胃痛が始まったのか、入江はお腹を押さえていた。その会話を静かに聞いていたリボーンはAに声をかける。
『心当たりでもあんのか?』
「うん。故郷に行ってみるよ」
『いつ帰ってくんだ?』
「さあ。こればっかりは僕にも分からないな」
彼が言う故郷というのは、DBDの世界のことだ。そもそも彼は故郷に二度と帰れない。最も帰れたとして、Aがその選択をすることはないが。閑話休題。
頷いたリボーンは10日後までには帰ってくるように言う。小さく笑ったAは善処すると言い、背を向けた。
その先に黒い霧が立ち上る。禍々しさでできているのではないかと思わせるような霧に入江たちは息を呑むが、Aは一切躊躇することもなくその中に入った。
その姿が霧の中に完全に消えると、霧は溶けるかのように消えていく。
『大人しかったじゃねーか、ヒバリ』
「別に。あれ絡みなら、あの子は決して話さないからね」
『エンティティのことか?オメーなら無理にでも聞き出すものだと思ってたぞ』
「……そうしたら、Aは僕から離れるだろ。そうでなくても、」
その言葉の続きは言わず、ヒバリは目を伏せる。そうかと呟いたリボーンは帽子のつばを下げた。
──そうでなくても、Aは僕から離れていこうとするのに。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月24日 23時