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咎めるような声で呼ばれても、ヒバリはAの腕を離さない。むしろ手の力を込めて首を振る。不機嫌を隠そうともしないヒバリに、Aは困ったように微笑んだ。
まるで子どもの駄々を諌めるような優しい笑みだった。決別すると言いながらも、Aは決心がつかないままでいるのだ。約2年ずっとそばにいたことが仇になったのだろう、強く拒否できないのだ。


別れも言えずまた世界を飛び、傷心気味だったAを救ったのは紛れもなくヒバリであり、そのヒバリに恩を感じているからこそ、Aは迷っている。
ただ一言、エンティティの言葉があればその腕は容易く振り払われるものだが、現状エンティティからの命令はなく、身動きが取れなくなった。

本来のAは人に優しく、懐に入れてしまえば、距離感が0に等しくなるほど対応が甘くなる。それこそツイステッドワンダーランドでは人に抱き上げられようとも、ベッドに潜り込まれようとも気にしなかった。
頰にキスされても恥ずかしがりはするものの、受け入れていたくらいなのだから、パーソナルスペースの狭さを察するのは容易い。


「おい入江、一発なぐらせろ。ワケありだったとしても腹の虫がおさまらねえ!」

「い゙っ!」

「まあ待て。入江にはまだ聞かなくちゃなんねーことがあるだろ?」


そんな2人のことを放って話は進んでいく。白蘭の能力について言及するリボーンの声に、Aはヒバリから目を逸らした。
興味があるというような面持ちに、ヒバリは入江が言ったことを思い出していた。


『彼は自ら強者につく。そばに置く人間は強い者しか認めない』


わざわざ言われなくても分かっていたことだ。Aが強い者を好むことなどとうに知っている。ヒバリ自身が強者に分類されているからこそ、Aは今まで隣にいることを拒まなかった。ヒバリが取るに足らない弱者であれば、あの日Aが風紀委員になるということもなかった。
しかし、そんなヒバリですら彼に手加減されているのが現状だ。そして今、Aはヒバリから離れようとしている。手放すつもりはなくとも、焦燥感に駆られた。





──君が僕に誰かを重ねているときだって、こんな思いをしたことがないのに。

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作者名: | 作成日時:2022年10月24日 23時

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