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立ち上がりかけたところを、肩を押されて座り直す。部屋を出ていくヒバリさんを見送って、入れ違いで入ってきたヒバードを構ってやった。
なんだか、この子が僕の監視役みたいだよね。僕が大人しくしているようにって。そういうわけじゃないと思うんだけど、こうもタイミングが良いと勘繰っちゃうな。
まあ、どっちでもいいか。時間を潰すにはちょうどいいし、かわいいし。
「A!」
「どうしたの?」
「エンティティ、サマ、ゴメンナサイ?」
一瞬呼吸を忘れる。ヒバードがエンティティさまのことを?それに、ごめんなさいって?なんで?
思わず手に力が入って、ヒバードを握り潰しそうになったから、慌てて解放した。ヒバードは僕から離れて机の上に降り立つ。不思議そうな表情のヒバードは繰り返し僕の名前を呼んだ。落ち着いて深呼吸をする。
違うよ。ヒバードは覚えた単語を披露しているだけ。確かにヒバードは賢いけど、繰り返し教え込まないと覚えない。だから、知ってるわけじゃない。ヒバードの近くにいて、エンティティさまを呼ぶのは僕だけ。
だから、たぶん10年後の僕がエンティティさまに謝っていたんだ。どうして?何があったの?
思い当たる節があるとすれば、ヒバリさんとの関係のことくらい。だけど、ヒバリさんの口振りからして、たぶんそれは許されていた。だから、他のことなんだろう。
でも、僕が……そんなはずない。僕はエンティティさまの忠実なしもべだ。謝らなきゃいけないような状況になる前に対処するはずなんだ。
「オネガイ!ダイジョウブ!」
「お願い?」
「エンティティ、サマ」
ヒバードが覚えるくらい、エンティティさまに繰り返し頼んでいたことがあるってこと?それは何?
「ヒバード、それは、」
「何してるの」
「っ、ヒバリさん……」
どきどきと心臓が跳ねる。襖を開けたヒバリさんが不思議そうに僕たちを見ていた。ヒバリさんに気付かないくらい動揺してたなんて。
らしくないなと思いつつ、ヒバードを撫でる。
「なんでもないですよ」
「……そう」
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月24日 23時