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どうすればヒバリさんから穏便に離れることができるんだろう?……穏便に、なんて望んでいるから、良い方法が浮かばないのかな?こだわらなければ、良い方法が見つかる?
途端に動きが鈍くなる思考回路に呆れて、考えることを放棄した。また今度にしよう。いつか見つかるはずだから。今じゃなくてもいいはずだから。
B8階に着いて早々、ヒバリさんはトンファーを出す。沢田綱吉は既に準備ができていた。壁際まで下がって座り込む。膝を抱えながら、ぼんやりと飛び散る炎を眺めた。
大空の炎も綺麗だと思うけど、雲の炎も綺麗だよねぇ。普通じゃ見られない紫の炎が神秘的だって思うんだ。それを言えば、他の属性もそうなんだけどね。
でも、ヒバリさんの炎は揺らぎがなくて強かなんだ。まるでヒバリさんを体現したような炎だから。
羨望と少しばかりの妬ましさがまた顔を出す。僕にはないものが欲しくなってしまう。羨ましくて、妬ましくて、どうしようもない。違う生き物だからと自分自身を慰めて、膝に顔を埋める。
覚悟だけで炎が灯るのなら、僕にもあったはずなんだ。でも、そうじゃないから僕にはないんだ。分かっているけど、望むだけならいいでしょ?誰にも言わないし、エンティティさまにお願いするわけでもない。
僕にだって欲しいものの1つや2つくらいあるんだから。欲しいと思うことだけは許してほしいな。
ゆらゆらと体を揺らして余計な考えを振り払う。時間が空くと変なことばかり考えてしまうね。僕の悪い癖だ。
激突する音が聞こえて顔を上げる。粉塵が舞い上がっている場所に、沢田綱吉が座り込んでいた。
「いつまで草食動物の戦い方をするつもりだい?君はまだ武器を使っていないよ、沢田綱吉」
沢田綱吉の額の炎が消える。もうおしまいかな?
「眠くなってきた。そろそろ帰る」
「なっ!!ちょっと待ってくださいヒバリさん!!」
「A、帰るよ」
はーいと返事をして立ち上がる。帰って何しようかなぁ?特訓しようにも、ヒバリさんには休めと言われてしまうし。前に強行突破でトレーニングルームに行ったらハリネズミまで出されたんだよね。兵器だと分かっているけど、あの子が取り乱すのはかわいそうで、渋々やめたんだっけ。
そのときの満足そうな顔をしたヒバリさんの憎たらしいこと。少ないリングを壊してまですることかなって思ったし。
でも、それで特訓をやめてしまうあたり、僕も甘いんだよねぇ。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月24日 23時