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「Aは自分で自分に暗示をかけたんだ。自らは人間ではなく人形だってね。そこに至った経緯も理由も僕は知っているけど、君たちに話すつもりはないよ」
「Aさん、は……人間なんですよね?」
「さぁね。でも、君達みたいな人間らしい生物じゃないことは確かだ」
だからこそ、Aは自身が人間ではないと確信を持っていたし、人形だと暗示をかけていた。そのほうがエンティティの信者を務めるにあたって最適だからだ。
自分の意思は不要だということが一層そのマインドコントロールに拍車をかけた。
「意味が分かんねーぞ、ヒバリ」
「理解しなくていいよ。Aのことを知っているのは僕だけで充分だ」
「随分な独占欲だな。余裕がねー男は嫌われるぞ」
「それはどうだろうね」
フッと微笑むヒバリはAを抱き上げる。死んでいるかのようにぴくりとも動かないAを、ヒバリは愛しいものを見つめるかのように優しい瞳を見せた。
「この子は僕のだよ。君たちにはあげない。特に沢田綱吉。君がAのことをどう思おうが、Aが君に心を許す日はない」
「え゛っ!?」
「10年後の君は随分とAに執心のようだからね。今のうちに釘を刺しとくよ」
鋭い視線が敵意を持ってツナに向けられる。肩を震わせたツナはヒバリの言葉を時間をかけて飲み込み、目を白黒とさせた。それもしばらくすれば、ツナは納得したように頷く。
多少誤解はあるものの、ツナはかねてよりAと仲良くしたいと思っていたからだ。その様子がヒバリの癪に障ったのか、顔を顰めさせる。
「これ以上Aに近付くのなら、次は殺す」
「あ、いや違くて!!オレはただAさんと、仲良くなれたら、いいなって……」
徐々に尻すぼみになっていく言葉。ヒバリは気に入らないとばかりに鼻を鳴らした。
「無理だよ。Aは君を仲間だと思うことはない。あれからの命令がある限り、Aにとって君は守るべき弱者の他にならない」
「あれからの命令……って、まさかエンティティ……?」
その言葉に返事はせず、ヒバリは踵を返す。その後ろを草壁が追いかけていき、3人はトレーニングルームから姿を消した。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月24日 23時