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ゆっくりと目を開ける。酷い倦怠感に指の先まで痺れているような気がして、うまく力が入らなかった。それでもなんとか体を起こして周りを見れば、どことなく懐かしい感じがする。
あ、そっか。ヒバリさんの家だ。畳とか、和風の家具はヒバリさんの家を模しているかのような配置で並べられていて、どこか落ち着く雰囲気だった。
というか、似ているってだけで……ここはどこ?言うことを聞かない身体を無理やり動かしていると、眩暈に襲われて脱力する。
布団から天井を見上げてひとまず状況を整理しようと、気絶する前のことを思い出した。えーっと、確か僕はいつも通り見回りをしていて。それから、そう。急に身体が重たくなったんだ。というより、感覚が狂ったっていう表現の方が適切かな。
五感を司る脳みそに膜を張られて、身体へと下す命令が鈍くなった、ような……。消化不良を起こしているような感覚だった。そのあと気絶した、はず。
思い出そうにもまだ脳に膜が張られているような感じがして、どこか薄ぼんやりとしているから。これ以上は難しいかな。
突然襖が開けられて肩を揺らした。僕が気配を察知できないなんて、どういうこと?そう思いながら目を向ければ、ヒバリさんに似ている人が立っていた。後ろ手に体を支えながら起こして、物も言わず僕を見下ろすその人を見つめ返す。
じわりじわりと込み上げてくる安堵に、自分でも驚きながら口を開いた。
「ひ、ばりさん、ですか……?」
「そうだよ」
「……………………んん?」
随分と情けない声が出たと思う。困惑して事態を飲み込めない僕を笑って、ヒバリさんは腰を下ろした。その姿に既視感を覚えて、この状況が僕が初めて倒れたときとピッタリ重なることに気付く。そこですとんと腑に落ちた。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月11日 19時