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『そして大空戦の勝利条件はただ1つ。ボンゴレリング全てを手に入れることです』
リストバンドから淡々と説明する声が聞こえてきて、むしゃくしゃする。無理に立ちあがろうとすれば、骨が軋む音が聞こえてきて、それも腹立たしさを助長させた。
この僕が、何もできないなんて。無力さを味合わされることになるなんて。殺してやりたいくらいだ。
『それでは大空のリング、XANXUS VS.沢田綱吉。勝負開始!!』
イライラする。僕がこの程度手間取るだなんて、許されない。そうだよ。許されるわけがない。僕はこんなところで立ち止まらない。重力がなんだというの。骨が軋もうが、位置がずれようが、どうでもいい。
なるべく体に負荷がかからないように扉に近づく。一瞬立ち上がれればそれでいい。そのときに扉を壊す。扉の外は特殊装置の範囲外のはず。そうしたら、僕は自由だ。こんな束縛、枷にもならないって教えてあげるよ。
黒い霧から斧を取り出して、呼吸を整える。一撃で、扉をこじ開ける。その覚悟を胸に斧を支えにしながら立ち上がる。重く伸し掛かる重力を気にせず、斧を振りかぶった。ガンッと大きな音を立てて扉が吹き飛ぶ。
前のめりで倒れるように扉の外に出れば、随分と体が軽くなった。踏みとどまって荒い呼吸を繰り返していると、目の前に影ができる。
「君、自力で出れたんだ」
「ヒバリさんこそ、毒はどうしたんです?」
「とっくに終わらせたよ」
投げて寄越されたリングを手に、目を瞬かせる。解毒、と呟かれてようやくその意味を理解した。一応解毒はしようか。そんなふうに心配されるなら、解毒しとかなきゃ置いていかれそうだし。
「ありがとうございます、ヒバリさん」
「別に。それで、行けるの」
「もちろん。そのために出てきたんですよ」
リストバンドにリングを嵌め込む。それからリングを投げ渡そうとすれば、ヒバリさんは僕に持っているように言いつけて歩いていった。若干ふらつく体を叱咤してその後ろをついていく。
結構無茶したかもしれない。ヒバリさんがああも簡単に解毒できるなら、待っていた方が賢明だったかな。でも、ああやって膝をついているのは許容できないし……。
「僕は嵐の方に行くよ」
「じゃあ、僕は雨に」
それじゃあと別れて、僕はB棟に向かった。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月11日 19時