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再び握られた武器はよく切れる大包丁。肉を切り、骨を断つために鈍い光を放っていた。なぁにと首を傾げる姿はその手に持つ大包丁がなければ、優しさに満ちた天使のように見えたはずだ。実際はこれから人を殺す悪魔でしかなく、彼に言わせてみれば、悪魔ではなくエンティティの信者だと頬を膨らませることだろう。
「し、死にたくな、」
「つまんない」
命乞いをしようとしたマティアの首は大包丁によって切り離され、遺言を最後まで言うこともできず、絶命した。一瞬遅れて切断面からシャワーのように血が噴き出し、Aは汚れないようにと血が届かない範囲まで下がる。
そんなAに黒い霧から触手が忍び寄り、顎を持ち上げて頭を撫でた。見る見るうちに真っ赤に染まった頬は、場違いとしか言いようがないものだった。
***
──勝負開始後-沢田綱吉サイドにて。
ツナたちは一瞬何が起こったのか理解できずにいた。宙でくるくると回っている何かは地面に落ちる。びちゃりと音を立てて赤い液体が散って、その断面からは肉と白い骨が見えていた。嘔吐きそうになり、ツナは口元を押さえる。それが腕だと理解することを脳が拒んでいた。
リボーンは舌打ちをして、無理すんなとツナを心配する。
「あ、あれ……う、で……?」
「な、なにが起こったんだ!?」
「開始直後、Aが斧を投げたんだ。それがマティアの腕を断ち切った」
そう説明するリボーンの心中は苦く、ボルサリーノを下げて表情を隠した。これ以上ツナたちに惨いものを見せてくれるなと願いつつも、銃を構えたマティアにAが悪どい笑みを浮かべたことで、無理な願いだったと思い直す。
そうしてナイフを取り出し投げた先が銃口であることに気付いて、息を呑んだ。銃を扱うリボーンはその危険性をハッキリと理解していた。その状況を意図的に起こそうとするAの考えに、凶暴性に目眩がしそうになる。
『ね?出来が違うんだって。生物として根本から違うんだよ』
呆れたように言うAは目の前の人間を生物として認識していないような冷たい目をしていた。これがエンティティの信者だと言わんばかりにマティアを蹂躙する。
食物連鎖の最上位と最下位が相対しているのだ。結果は分かりきっている。
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怜(プロフ) - リィさん» ありがとうございます!!面白いと言っていただけるとやる気が出ます!まだストックは尽きていないので、今後も早めに更新できると思います。お楽しみに〜! (2022年10月7日 0時) (レス) id: 37b3e8feed (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - あ"ぁ"っ…!楽しみすぎてつらい…!!なんでこんな面白い話を作れるのか疑問です…更新頑張ってください!! (2022年10月5日 13時) (レス) @page32 id: 1730b53d16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜 | 作成日時:2022年10月1日 3時