蹂躙 ページ9
現れたアサシンは、数にしてコチラの３倍、いや、もしかすれば５倍以上かも知れない。多いなぁ。
──攻撃されたら、真っ先に死ぬのは私か…
「我らは分断された個」
「軍にして個」
「されど個にして軍」
「影」
影、ねぇ。
「多重人格の英霊が、人格の数だけ実体化しているのか？」
そこの魔術師と、同じ事を考えていた。
「…その様ですね。やはり、そういうタイプだった訳ですか。王よ、如何しますか」
英雄王は鼻を鳴らしただけで、指示を出しはしない様子を見せる。まるで、動くなと言う様に。ならば動く必要は無さそうだ。
「ラ、ライダー…」
「坊主、そう狼狽えるでないわ。宴の客人を寓するのも、王の格の一つなのだぞ」
「こんな者共も宴に招き入れると言うのか？貴様」
「無論。王の言葉は万民に向けて発するもの。それを傾聴しに来るならば迎え入れるのが王たる者だ」
柄杓の駆け付け一杯を掲げた征服王は、その酒は血だと言った。ああ、どこぞの経典に似た言葉を見た気がするなぁ。このパンは肉、この酒は血と。柄杓は袂が斬られ、征服王の肩に酒が掛かる。嘲笑は、不気味に響き渡る。
「そうか…この血は貴様らの血と言った筈。あえてブチ撒けると言うのなら、是非も無い」
魔力を感じた。凄まじい風邪が吹き荒れ、征服王は鎧を纏う。私は危うく吹き飛ばされそうになった。しかし、その体は英雄王の宝物庫から伸ばされた鎖によって留められている。
「これ…まさか、神々の鎖…盟友エルキドゥ？」
「ほう。華苑貴様、存外に博識よなあ。我が盟友を遣わしてやった事、誉れと知るがいい」
「充分過ぎます。ありがとうございます」
風が止む頃には、そこは心象世界の具現化による砂の平原だった。いっそ、その果てしない大地の原が美しいと思える程に、立派だった。
「かつて王が治めていたウルクも、このような景色だったのですか？」
「……どうだろうな。だが、アレもまた砂の平原と言えよう。広大かつ、弱者を強打し続ける自然の獄であろうな」
懐かしむような声に、それ以上の言葉は無かった。すると、背後から大勢の軍勢が現れた。征服王が、声を高らかに語る事には、アレこそ征服王の宝具。その名も、王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)と。
⋮
目にしたものは、確かに蹂躙だった。多勢に無勢、しかし見苦しいものは無く、勝つべくして勝ち誇る軍勢の勝鬨を見た。宴も終わりに近づき、征服王はセイバーこと騎士王に『王とは認めん』とまで言い放ち、マスターを連れて去った。
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まつよ - 面白かったです。是非、ステイナイトの時の主人公を見てみたいです。 (2019年5月29日 21時) (
レス) id: 4baad1a05f (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年5月10日 15時) (レス) id: 483535372f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華苑 | 作成日時：2019年5月10日 11時
