機転 ページ6
波止場に来ていた。私達は霊体化していて、目下の喧騒を見ていた。霊体化しているから浮いていても何ら問題は無い。街頭の上から高みの見物とばかりに腕を組む英雄王の膝より下の辺りに浮遊し、私は下を見ていた。
《ふん、この我を差し置いて王を語るとは。華苑、貴様は下がっておれ。また魔力を借りるが、倒れてくれるなよ》
《…了解しました》
何となくだが、どんどん、英雄王の態度が柔らかくなっているような気がする。間違っても爆風が届く事の無い場所まで下がった。英雄王が姿を見せて、ここからでは少しも聞こえないが言葉を交えているらしい。
──何の話をしているのかな……っ、この魔力！
「英…っ、王様！バーサーカーが！」
思わず近付いて姿を見せてしまった。感じた魔力は単なるバーサーカーではなかった。狂化を付与した事による暴走状態だった。英雄王なら大丈夫と頭で理解はしていたのに、飛び出して、バーサーカーの魔力が込められた鉄パイプの投擲を、腹部に受けてしまった。
「う''っ！」
「なっ…貴様、何をしている！この愚か者が！」
投擲の風圧に流されるまま、私の体はコンテナの壁に突き刺さった。背中も傷め、すぐに頭を上げる事が出来ない。目だけ前を見れば、追撃するのが視界に映った。鉄パイプに触れ、限定的に自分の魔力を共有する。そして右手をバーサーカーに向けた。
「我、この身に宿すは契約の証。我、ここに誓いを立てん。汝の意を現実とせん…令呪を以て命ずる！サーヴァント、バーサーカー！私に対する…一切の攻撃を、禁止する！」
『!?』
ピタッと動きを止めた。とりあえず、事無きを得たらしい。そのうちに、何とか鉄パイプを抜き取り、腹部を押さえて出血を止めようとした。しかし、腹を貫通していて、意識を保つのも苦しい。
「っ、うぅ…」
「華苑、立てるか」
「…はい、立て…ます」
そうか、ならいい。と英雄王は私に言い、関心を己に移したバーサーカーとの一騎討ちになった。血を流している所に容赦無く魔力を吸い取られて、私はコンテナに身を預ける他に無かった。すると英雄王は動きを止めた。
「…この我を邪魔立てするか、時臣！」
遠坂さんが？彼一人の令呪では足りなさそうだ。
「っ、王よ、お咎めは受けますから退いて下さい！でなければ…」
私は英雄王に右腕の令呪を見せた。使うぞ、と。今の状態で令呪による魔力を行使すれば、倒れるのは目に見えていた。英雄王は、命拾いしたと言って私を俵担ぎにして帰還した。や、優しい。
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まつよ - 面白かったです。是非、ステイナイトの時の主人公を見てみたいです。 (2019年5月29日 21時) (
レス) id: 4baad1a05f (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年5月10日 15時) (レス) id: 483535372f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華苑 | 作成日時：2019年5月10日 11時
