-Anemone-Ⅰ (ページ5)

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Aside

9月

ホグワーツ特急に無事乗ることができたAは、コンパートメントに独り、じっと外を見ていた。

叔母にはホグワーツで友達ができたらと願っているようだったが、4歳から独りだった彼女は友達の作り方すら知らない。

ぼーっと景色を見ていると扉がノックされた。

ﾊｰ「ネビルのカエル見なかった？」

生憎、カエルなんかは見ていないし、声も出ない。

首を横に振ると、その少女は自己紹介を始めた。

ﾊｰ「私、ハーマイオニー・グレンジャー。ハーマイオニーでいいわ。あなたは？」

まさか、話しかけられるなんて思っていなかったし、こんな時でも声は出てくれない。

ﾊｰ「どうしたの？」

ハーマイオニーが不思議そうにこちらをのぞき込む。

焦った私はカバンに入っていたノートをちぎり

“A・ブロンテ
事情があって声が出せません。
魔法についても全然知らないの。”

と書いて渡した。

ﾊｰ「そ、そうだったのね。急に話しかけてびっくりしたわよね。」

あぁ、また一線を引かれるのだ。

慣れていることじゃないか。

だが、ホグワーツでもそうなるのだと察した彼女は、
ひどくショックを受けてしまい、俯いてしまった。

ﾊｰ「A、私たち一緒だわ。友達になりましょ！」

まさかの発言だった為に、Aは人前で暫く開けていない口を大きく開け音のないただの息を漏らした。

ﾊｰ「私もマグル生まれで、魔法については全く知らなかったの。私たち気が合うはずよ。」

気が合う、なんて言われたことがあっただろうか。

思えば、マグルの世界で生活をしていた時も友達は一人もいなかった。

――――――

声が出ないなんて呪われてる、

両親に捨てられた子、

親の愛を知らないかわいそうな子。

――――――

誰も直接は言ってこないが、いやでも耳に入ってくる。

きっとホグワーツもそんな人間ばかりだと思っていたAは

ハーマイオニーの発言を受け、衝撃を受けた。

ﾊｰ「え！？やだ、ごめんなさい！そんなにいやだったの？」

そう言われ、自分が泣いていることに気付いた。

慌てるハーマイオニーを前にAは首を横に振る。

“嬉しくて、初めて友達になろうって言われて”

と書いて見せた。

叔母の願いは、思ったよりずいぶん早くかなったらしい。