移行しました(工藤姉は弟がキライ５)

諸伏景光の正義とは ページ28

諸伏side


『ねぇ、ひろ君。アナタにとっての正義って何？』

「……それ、今の俺に聞く？」



組織によって殺された“俺”は、公安にも生存を報告できずに赤井の家に身を隠していた。

そんな俺にするような質問でもないような…


Aちゃんは、申し訳なさそうに眉を下げた。




『ごめん、でもどうしても聞きたかった。公安警察官にとっての正義が何なのか、聞く機会なんて中々ないでしょ？』

「まぁ…確かにね。」




正義とは直訳すると、
正しい道理、人間行為の正しさ。という意味だ。

だが彼女は、そんな答えを求めているのではないのだろう。




俺は、国家が平和であり続ける為に
血塗れる事を選んだ。


“正義の為”に、悪事に加担し守るべき人間を傷付け
“正義の為”に、法の下、罪を償わせるべき犯罪者を殺し
“正義の為”に、悪以上に黒く染まった。


俺は“正義の為”に“悪”を選んだ。

そんな俺が、掲げる正義とは…




「みんなが笑顔で、幸せが満ち溢れた日常を守る為に、掲げるモノ…かな。」

『多数の幸せを守る為に、少数は犠牲になっていいと？』

「その少数を救う為に俺たちはいるんだ。悪者を退治する。そんな正義はあってはならないと、俺は思っているよ。」




警察官は、悪を駆逐することが目的じゃない。
法律に基づき悪を取り締まることが、警察の仕事なんだ。

刑法とは、罪を償わせて更生させる事が前提なのだから



『偽善だ。』

「罪を償った先にある救済。警察官としてそれを願わなければ、正義なんて語れないからね。」




偽善だと、夢物語だと言われようとも
俺たちは理想とする社会の為に、今日も黒く染まる。


たとえ
その正義に、俺自身が喰われたとしても。




ーーー
ー




「君が信じたい正義は、どんな形をしているんだ。A」




飛び立った一機の小型ジェット機


滑走路の端で、それを見上げながら
煙草の煙を吐き出した。

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