移行しました(工藤姉は弟がキライ５)

同じ景色 ページ27

貴方side


目下に広がる
星屑のようなアメリカの夜景


組織所有のプライベートジェットに乗って、私たちはアメリカから離脱した。

拉致されたあの時と、同じ景色。同じ飛行機。


それなのに、置かれている立場が違うだけで、こんなにも見えるものが変わってくるだなんて──




向かいの席に座る、顔色の悪い大女優へ目をやる。

あの後、負傷したベルを担いで地下道を歩くのは本当に大変だった。


ひろ君によって撃たれた傷は、後3ミリズレていれば脾臓をやられていた。

私ひとりでの手術は困難だっただろう。

手術したてで飛行機に乗るなんて自i殺行為だとは思うけど、追っ手がかかっている今はそうも言っていられない。


そんな状態でも、輸血パックを横に置いて優雅に座席に座るなんて、さすが組織の女幹部。

大怪我に慣れ過ぎて人体の限界を超えているどころか、もやは化け物じみてる。


普段よりさらに青白くなっている顔は、整った美しい顔立ちも相まって、
まるでギリシャ神話を模った女神の彫刻の様だ。

その中身は、黒く染まっているけれど




…あれ、今ちょっと兄さん(ジン)みないな言い回ししてたよね、私

もしかして、遭難中に思考回路が兄さん寄りになったとか…！？

うわぁ、マジかよ。人と話す時は気を付けよ…




「ねぇ、A。この世に神様っていると思う？」

『…もし居るのなら、今頃兄さんあたりが銃弾浴びせてるでしょうね。』

「ふふ、確かにそうね。」




ベルは傷を気遣いながらも、上品に笑った。
そうして窓の外へと視線を移す。




「私ね、ついさっき天使(エンジェル)に会ったの。…あんなに美しいモノを育んでくれた、この世界も捨てたもんじゃないわね。」

『もしかして…。成る程、分かりました。取り敢えず、尿検査しましょうか。まさかFBIがそんな非人道的なことするなんて…』

「失礼ね。薬i物なんて投与されて無いわよ。」




いやでも、さっきからどこか上の空だし…

作戦失敗して、おまけに腹に1発銃弾のプレゼントまで貰ったのに、なんでそんなに嬉しそうなの…？




「無償の感情を向けられたのなんて、久しぶりだわ。それに…あの子達と出会ってから世界が色付いて見えるのよ。ふふ、まるで初恋みたいね。」

『……あー、手遅れになった大変だし、やっぱり尿検査しましょうよ。』

「だから薬の影響じゃないわよ！！」

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