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降谷side
桜の舞い散る公園は
僕の守りたいものを凝縮したような空間だった。
ブルーシートの上で、母親が愛情を込めて作ったのであろう弁当を囲み、笑い合う家族。
桜そっちのけで弁当を頬張る子供を、幸せそうに眺めている両親。
他の花見客も、酒や弁当を片手に桜を眺めるその顔は、皆一様に幸せそうだ。
だが僕は、彼らのように桜を愛でる為に来たわけではない。
ここへは、組織のバーボンとして訪れている。
そんな僕の存在が、酷く醜いモノに感じた。
光が強ければ、一層影が濃くなるように
僕の影がよく見える。
いつの間にか、守りたいと願った暖かい日常が、僕にとって居心地の悪いものとなっていた。
…滑稽だな
『___』
いるはずもない彼女の声が聞こえドキリとした。
アイツが…彼女が、ここにいるのか?
声がした方を振り向けば、見知らぬ男と桜を見ながら歩いている女性の姿が見えた。
間違いない、彼女だ。
普段ボサボサなまま一つにくくられていた髪は、下され緩く巻かれ、
パーカーが常時装備だった服は、白の春ニットに、ピンクベージュのプリーツスカートと女性らしい清楚な服装している。
シンプルだからこそ、彼女の魅力をより引き立たせていた。
その彼女に、僕は目を奪われた。
きっと他の者は、言葉を交わさないかぎり彼女だと分からないだろう。
それほどまでに、彼女は綺麗だった。
だが、隣にいた男に抱き寄せられ、驚いた表情をする彼女を見て、
血液が蒸発するかのように体がカッと熱くなった。
僕は変装している事など忘れ、無心で彼女の方へ手を伸ばす。
彼女に気安く触れるな。
触れていいのは__
だが、その手が彼女に届くことはなかった。
彼女が男を見て幸せそうに笑いかけたからだ。
その光景に、思わず僕は固った。
彼女の笑顔は、過去にアイツに向けられていたもので、
そんな彼女を見て微笑む男の表情は、どこかアイツと似ていた。
いつもの気怠げな薄笑いではなく、自然に笑えている彼女に、色々な感情が渦巻く中
どこかほっとしている自分がいた。
良かった
彼女にはもう、寄り添い笑い合える相手がいるのか。
これでいい…
これでいいんだ。
この胸の痛みは、
きっと、僕の気の所為
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仮面タロウ(プロフ) - シズキさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しいです(*^^*)何度か見直してるですけど減らなくて…、更新頑張ります! (2019年11月29日 23時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
シズキ(プロフ) - 仮面タロウさん» 凄く面白いですっ!!シリアスのようでユーモア溢れた会話やストーリ本当好きです!誰だって誤字はありますよ〜。これからも応援していますっ!! (2019年11月29日 22時) (レス) id: 0b065aa661 (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます( ;∀;) (2019年11月27日 18時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 32話に誤字がありました。「手見上げ」ではなく、「手土産」です。 (2019年11月24日 19時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
仮面タロウ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます! (2019年11月23日 19時) (レス) id: 2292ab7783 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仮面タロウ | 作成日時:2019年11月9日 14時