▼ ページ5
「
「は、はい！ 」
「入部届けは書いてきたか？ 」
私は用意した入部届けを円堂さんへと差し出した。
「よし。じゃあこれからお前は雷門中サッカー部の一員だ！ 」
「わぁー！ はい！ 」
「……本当に入るのか」
「え？ 」
「今のサッカーがどんな物なのか、知ってもお前はサッカー部に入ると言えるか？ 」
神童さんの言葉には先程の怒鳴り声とはまた違った圧があった。
「つい最近まで小学生だった君は知らないんだろう。フィフスセクターの存在を」
「フィフスセクター……」
「サッカーの行き過ぎた実力至上主義に歯止めをかけるべく、設立された中学生サッカー管理組織だ。管理の手は試合の勝敗にまで伸びていて、いくら名門でも逆らえば最悪廃部だ」
「廃部ってそんな」
「有り得ないと思うか？ だが、本当の話だ。……不思議に思わないのか」
「何がですか？ 」
「部員の数が少ない事に」
「あっ……」
それは朝練の時から感じていた。
「え、まさか、たった三人しかいないんです……？ 」
「そんな訳があるか」
「えぇ」
キッと睨まれ強めに否定されてしまう。
「来ないんだ皆。今年度のホーリーロード初戦、俺達雷門が０ー２で負けの指示を出されてから」
ホーリーロード──全国の中学生がサッカーの日本一を懸けて戦う──円堂さんの時代ではフットボールフロンティアと呼ばれていた、私の知る限り五十年は続いている伝統的な大会だ。
この大会で、どの様な活躍をしたかどうかで将来が決まると言っても過言ではない。日本中が注目する一大イベント。
そんなホーリーロードで、雷門中が予選敗退の指示を出されるなんて。
「じゃあ、皆やっても意味無いからって、練習に来ないって事ですか？ 」
「あぁ」
「そんなのおかしいです！ 」
「そうは言ってもこれが現実だ」
広々としたフィールドを手で指す神童さん。心配そうな顔でこっちを見る松風君と西園君が視界に映る。
「こんな状態のサッカー部に、いくらマネージャーとはいえ入ってしまったら内申書に響くぞ」
「それでも私、雷門のサッカー部に入るの夢だったんです」
「夢……」
「はい！ 神童さんもそうじゃないんですか？ 」
「……」
「神童さん？ 」
彼は目を伏せ軽く息を吐くと、真っ直ぐに私の目を見た。長い睫毛とアールグレイの底の様な瞳が美しい。
「サッカー部に入るのならまず仕事を覚えろ。音無先生の所に行け」
「音無先生……？ 」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
