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「典子ちゃん……」
悔しい気持ちは私だけではなく、周りの先輩達にも伝染していた。皆拳を固めて肩が震えている。
「くそっ！ 好き勝手言いやがって……。俺達がアイツらの足元にも及ばないだって？ ふざけんな！ 」
「万能坂中は俺達と同じランクＡだド！ なのに……！ 」
「悔しいか？ だったら、次の試合も勝てばいいんだ。言った筈だぞ。負けていい試合なんて絶対にない！ 二回戦も勝利を目指すぞ！ 」
金山理事長が話の途中に円堂監督！ と怒鳴ったが、円堂さんの声量には勝てず、彼な叱責は儚く消えた。
「典子、気持ちは分かる。だけど今は抑えろ。その気持ちは試合にぶつけるんだ」
「うぅ、円堂さん……。じゃあ次の試合、私を出してくれますか？ 」
「あ、それは無理だな。空きがない」
カラリと笑う円堂さんに三人まとめてずっこける。
「今の流れは出してくれるやつじゃ……？ 」
部屋に熱気が漂い始めた中、一人だけ涼しい顔をしている人がいた。
「……円堂監督」──南沢さんだ。
「なんだ」
「俺、もう付き合いきれません。退部します」
一瞬で部屋の空気が凍った。そんな私達の様子には一瞥もくれず、円堂さんに頭を下げてから南沢さんは部屋を出ていく。
「ちょッ、南沢さん！？ 」
「そ、そんな！ 待ってください南沢さん！ 」
倉間先輩と松風君が急いでその跡を追った。少し遅れて私達も理事長室を出る。
階段を少し折りた踊り場で松風君が南沢さんの行く手を阻み、倉間先輩が少し離れた位置で顛末を見守っていた。
「南沢さん！ 待ってください！ サッカー辞めないでください！ 」
響く声から、表情が見えなくても松風君がどんな気持ちで話しているのかが伝わる。
「お前もいい加減気づけよ。これ以上フィフスセクターに逆らってもいい事ねえって」
「でも南沢……せっかくここまで一緒に頑張ってきたんだド。本当に辞めちゃうんだド？ 」
同じ立場の天城さんからの言葉も彼の芯には届いていない。
「サッカーやってきたのは内申書の為だ。これ以上成績を下げたくはない。お前達とは価値観が違うんだよ」
「……本当にサッカーを辞められるのか？ 」
「はい。それじゃあ」
振り返る事なく、今度こそ南沢さんが姿を消す。誰かが鼻を軽くすする音がした。
「参ったな……。今南沢さんが抜けるのは痛いぞ」
霧野さんが真横で呟く。小さな声だったが、同じ事を思っていたらしい。場にいる全員の表情が曇った。
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
