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「来たか有人」
「父さん」
客間の上座に父さんが座っていて、それに向かい合う形で影山がいた。
「お忙しい中、今日はありがとうございます」
「気にするな。ほら、いつまでも立っていないでお前もここに座りなさい」
指定された席は影山から見て斜め前の椅子だった。抵抗があったが、大人しく指示に従う。
「なぜ影山がここに？ 」
「私が呼んだ。交友を深める良い機会だと思ってね」
「本日はお招き頂きありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ。久しぶりに会えて嬉しいよ」
影山の貼りつけたような笑顔が一瞬崩れた。
「もしかして覚えていないかな？ 八年前のパーティで一度私の後継者……有人の顔見せパーティに零君も来ていたと思うんだが」
「すみません、記憶が曖昧で……」
「有人はどうだ？ 」
突然話を振られて肩が震えた。
八年前といえば、俺がこの鬼道家に引き取られた年。六歳の頃の記憶はかなり朧気だが、言われてみればそんな催しがあった気もする。
「さぁ……僕も、微かに記憶にある程度です」
「そうか。二人で仲良く話していたが、何しろ六歳の頃の話だ。覚えていなくても無理はない」
視線を感じて影山を見ると、彼はその黒い瞳で俺を映していた。しかし視線が交わると何事もなかったかの如く目を細めて柔和な微笑みを浮かべる。
「日本代表選手に選ばれる前から、僕と鬼道さんのご子息にそんな繋がりがあったなんて。ふふ、運命的ですね」
「ははっ、運命か。これから有人をよろしく頼むよ」
「勿論です」
「また怪我をしないように、よく見ておいてやってくれ」
棘のある言い方だった。この間影山が俺の足を引っかけた場面はテレビ放送されていないが、耳には入っているのかもしれない。
「それにしても」
父さんが別の話題を影山に振ろうとしているのを横目で見つつ、運ばれてきた紅茶に口をつけた。
「影山さんがいなくなって帝国学園はどうなることかと思ったが、まさか零君が継続手続きを済まして運営しているのには驚いたよ。少し見ない間に随分と優秀になったね」
「そんなことは。父が万一の際に所持している利権が僕の元に行くよう、手筈を整えてくれていただけです。学園の運営も僕が手を出している部分はほんの少しだけ。帝国が今も存在するのは鬼道さんからの変わらないご支援あってのものです」
「ははは。君は逞しいな」
「あはは」
「……」
どちらも笑顔だが腹の中に何を抱えているか分からない。
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名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか！ ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (
レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました！更新ゆるりと待ってます！！ (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し40482号 | 作成日時：2020年10月18日 21時
