4 砂上の楼閣 ページ30
4 砂上の楼閣
練習メニューは至ってシンプル。愚直に走る、ただこれだけ。円堂を先頭にFW・MF・DFとほぼポジションごとに固まって続く、が、しかしそれも長くは保たなかった。
「おはよう不動君! 」
「……」
「また随分と辛そうなご様子だ。僕の見立て通り、体力にはあまり自信がないみたいだね」
「チッ、態々近くに来て何言うかと思ったら……。失せろ」
「言われなくてもあと少ししたら下がるさ。それにしても意外だな。君、こういう基礎練習にちゃんと顔出すタイプなんだ? あはは、可愛いところもあるじゃないか。それにしたってだいぶ周りと浮いてるけど。ほら僕が隣来るまでスペースあったから、気まずさとか感じないのは中々どうして図太いなと、おっと」
不機嫌を微塵も隠さずに、不動は足を動かすスピードを上げた。入れ替わりでバテはじめた吹雪が下がってくるので、僕も足の速度を緩める。
外周も二週目以降になると、最後尾からは中盤メンツの背が見えなくなった。最後尾にいるのは栗松、土方、木暮、壁山、飛鷹。見事にDFしかいない。
「土方君、土方君」
「あ、あ? どうした影山」
唐突な呼びかけに疲労困憊といった調子の彼は、やや呆けた顔で返事をした。
「走る時のフォームが雑だ。地面を蹴る様にしてはいけないよ。意識は後ろではなく常に前へ。足を前に持っていけば自然と体はついていくのだから」
土方は僕のアドバイスに戸惑いながらも動きを修正する。表情から察するにフォームを変えた事による効果はあまり感じていないらしい。しかしそれは想定内。
実感はすぐに湧かないだろう、しかしコイツみたいな手合は褒めれば愚直に続ける。
「いいね! その調子だよ。フォームを変えれば速度も上がるし疲労も減る。君の場合体力がない訳じゃない、出力方法を工夫すれば吹雪くらいになら追いつける」
「そうか? だけどよ、あと残りの距離で前の連中に追いつくのは」
「何、行けるさ! 自分を信じ給え! 」
「お……おう、そうだな! ありがとよ! 」
目標値を設定してやれば、それを達成するまでは言われた通りのフォームを意識して走る筈だ。
単純で扱いやすい。使える。
「……お先、失礼しまーす」
土方の後ろを追うみたく、木暮が続いた。
「……」──僕から逃げたな。
やや無理をしてペースを上げているのが丸分かりだ。人の顔色を読むのがうまい。土方とは打って変わり、木暮は使いにくそうだ。
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名無し40482号(プロフ) - 夢蜂さん» ホントですか! ありがとうございます。久しぶりに筆をとったのでお見苦しい点もあるかと思いますが、完結までまだまだこれからなので長い目で応援して頂けたらと思います(^^) (2020年11月13日 20時) (レス) id: b02fa3353c (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 久しぶりに占ツクに帰ってきたら好きな作品に巡り会えました!更新ゆるりと待ってます!! (2020年11月13日 12時) (レス) id: e0800992ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し40482号 | 作成日時:2020年10月18日 21時