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「あっち！！ 」
剣城の視線が指先に釣られる。グラウンドからじゃ見えるかどうかも怪しいけれど、優一君がいる観客席だ。
『京介、お前はお前の道を行け。そうすれば俺はお前と同じ夢が見られる』
優一君には伝えてほしいと言われたけれど、私が言わなくても分かる筈だ。剣城の気持ちが全部わかる訳じゃないけどこれだけは分かる。
だって剣城にとって優一君とのサッカーって、何かの為に、誰かの為にやるものじゃないでしょ。
「──本気でサッカーやって！！ 」
剣城は一瞬私を見てから、背を向けて龍崎を追いかけボールを素早く奪った。
「なッ──！？ 」
「神童！！ 」
神童先輩へボールを渡してそのままディフェンスの最終ライン付近まで下がる。
「何度やっても同じだ！ 」
「そんな意地悪な事言わないでくださーい！ 」
私のマークについている彼へ注意しつつ、包囲から抜け出す機会を窺っていると、松風がよろよろと立ち上がる様子が視界にチラついた。
「アルティメットサンダァッー！！くらえ──！！ 」
剣城の咆哮と共に稲妻を帯びたボールが帝国のディフェンスを蹴散らす。
「これが、アルティメットサンダー……！ 」
体温が上がる。
『雷門遂に帝国ディフェンスを崩した！！ 』
「何っ……！？ 」
マークについている彼が私と自陣のガラ空きになった自陣を交互に見た。迷っているんだ私の警戒と守備とどちらを優先させるか。
それなら私はギリギリまでコイツを引きつけておかないといけない──松風がシュートを打つまで！
「行けー！ 松風ー！！ 」
「なっ──！？ ソイツを止めろ、飛鳥寺！ 」
松風のデータは帝国にあまり渡っていない筈だ。
アルティメットサンダーの攻撃を免れた相手ミッドフィルダーが松風を追うが間に合わない。風が掴めない様に、するりと残っていたディフェンスを躱してシュートを打った。
「マッハウィンド──！ 」
「パワースパイク！！ 」
十分な助走をつけて蹴られたシュートは暴風を起こしながらゴールへと襲いかかり、ゴールキーパーを吹き飛ばした。
『ゴォール！！ 松風の公式戦初ゴールで、１ー２、雷門一点返したー！ 』
「やったーー！ 」
私は飛び跳ねながら松風の元へと駆け寄る。
「凄いよ天馬！！ 」
「シュート完成してたんだね！？ 」
「いやそれが、たった今完成して」
「えぇぇー！？ 」
信助の後に私も続けて松風とハイタッチをしていると、剣城がやってきた。
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
