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「京介のチームメイトだったよね？ ほら見ろ、言ってるそばから。迎えに来てくれたのかい？ 京介を宜しくな」
「ぁ、はいっ、実は今日は剣城に」
「いいからここを出ろッ……！ 」
バタバタと二人の足音が遠退く。
「……行ったよ。出ておいで、典子ちゃん」
ベッドとテレビの置かれた隙間から這い出てくる私を見て、優一君は笑う。放課後の練習前に優一君と話がしたくて病院に来てみれば、すぐさま剣城が来てしまい、こうして隠れていたのだがその上松風までやってくるなど予想も出来なかった。
連れ去られた松風は大丈夫だろうか……。
「すみません、えっと。決して私と松風は怪しい者では……。ただ、私達は剣城に、練習参加してほしくて」
「やっぱり。そんなところだろうと思ったんだ。行ってないんだろ練習に」
「いやぁ、来てはいるんですけど参加してなくてー……」
「参加してない？ 」
「うーん……」
言い淀む。なんて説明すれば。そもそもどこから説明すればいいのだろうか。
「いいよ、ゆっくり話そう。俺から聞いてもいいかい？ なぁ、典子ちゃんはホーリーロードにあいつが出場しているか知ってるよな？ アイツ何も話してくれなくてさ」
「え……！ 剣城は殆どの試合出てますよ」
「そうなのか？ 」
「テレビ、観てなかったんです？ 」
「日程も知らせてくれなくてさ。次の準決勝は京介出るのかな？ 」
「それは……」
「っと、ごめんよ」
椅子に座るよう促される。ベッドに座っている優一君が、手元のサッカー雑誌を撫でた。
「……兄馬鹿かもしれないが、弟は世界で活躍する選手になれると思っているんだ。あの、豪炎寺さんの様に」
「豪炎寺さん……、イナズマジャパンのエースストライカーの様にですか」
「そう。豪炎寺さんは俺達の憧れなんだ。昔はよく必殺技の真似とかしたものさ」
「それ私もやってました！ ファイアトルネードって」
「だよな！ 」
サッカーを語る時の優一君は子供っぽく笑う。いやいや、彼だってまだ子供なんだから年相応と言うべきか。
「俺達は豪炎寺さんからサッカーという夢を貰った。だから弟にもそんな選手になってほしいんだ。世界のフィールドで思いきってプレイをして、そして世界中に夢を与えてほしいんだ」
「……世界で」
「あぁ」
「剣城なら、きっと世界中の人達に夢を届けられますよ。私が保証します！ 」
「そうか、ありがとう」
「優一君」
「ん？ なんだい」
「お願いがあります」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
