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帰りはバスに逃げ込む様にして乗車し、やっとの思いで帝国イレブンを撒く事ができた。雷門の稲妻マークが見えた時はちょっと泣きそうにすらなった。恐ろしや帝国学園、警報の音を思い出すだけで鳥肌立つレベルにはトラウマになっている。
「帰ってきたか。お前達帝国へ行っていたそうだな」
第二グラウンドで皆の姿を見た松風君が、隣で安堵の息を吐いた。
「すみません円堂監督。この子達は私を心配して来てくれたんです」
「分かってるさ……。それでどうだ、帝国で何か見えた事はあるのか？ 」
「見えた事……御門とかいう奴が打ったシュートが凄かったです！ 俺、ちょっと足で触っただけでビリビリ来ました」
「俺達を追いかけてきた時の、示し合わせたみてえな段取りの良さ見ると守備も手強いだろうな。勝つ為には何か決め手がいる」
「決め手……、円堂監督」
神童先輩は少し考えた後、円堂さんと向き合う。
「以前、久遠監督と考えた『アルティメットサンダー』という必殺タクティクスがあるんですが、あれが完成すれば帝国戦を有利に運べる鍵になるかもしれません」
「そんなタクティクスがあるのか」
腕を引っ張られる感覚に横へ目をやると、葵ちゃんが小さな声で尋ねてきた。
「典子ちゃん、タクティクスって何？ 」
「直訳だと戦術って意味なんだけど、分かりやすく言うなら大規模な必殺技に近いかな。人数が多い分強力だけど、難易度も高いんだよね」
「へぇー」
「ところで久遠監督ってどなた？ 」
「円堂監督の前にいた監督だよ。久遠道也監督」
「へぇー。久遠道也……エエ！？ 久遠道也って、あのイナズマジャパンの監督じゃん！？ 」
「そこ。私語は慎め」
鬼道有人といい、今日はよく会話に有名人が出てくる日だ。
「……うん。やってみる価値はありそうだな、よし！ 今からアルティメットサンダーを試してみよう！ 」
「アルティメットサンダーの『タクティクス作戦書』が一軍の部室にある筈です。持ってきます」
「なら私が持ってくるわ」
「良いんですか？ お願いします」
「ええ。皆は練習を続けていて」
音無先生は狩屋君を連れてサッカー棟へと向かった。ついでに狩屋君へユニフォームを渡して、部室の案内でもするのだろう。
「練習再開だ！ ニ対ニで攻撃と守備に分かれて、攻撃側はシュートを狙い、守備はそれを阻止する。最初の攻撃は神童と倉間、守備は車田と速水！ 」
呼ばれなかった者は自分の番に備えてベンチで観戦する事になった。
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
