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そんなことを考えていたからか、トイレのドアを開けたら裕がいた。
「あ〜裕だぁ〜」
「お前、呑みすぎや」
「だってさー、みんな呑め呑めっていうんだもん〜」
裕は心配半分、呆れ半分といった表情を見せた。
心配してくれるの嬉しいかも。
だから裕に近づこうとしてトイレから出ようとした。
なのにドアの段差に躓いてしまう。
躓いた弾みに裕に抱きつく形になってしまった。
久しぶりに感じる裕の身体。
こんなに筋肉質だったっけ?
何だか離れたくなくて、裕が焦ってるのが可愛くて…
もっと近づきたくなって、気がついたらキスしてた。
すぐに離れて裕の顔を見る。
完全にフリーズしてた。
「ふふふ〜またね」
今なら酔った勢いってことで処理できる。
まぁ小さい頃したことあるしね。
とはいえ裕に見えなくなった所でバクバクうるさい心臓に手を当てた。
動揺してるのは私の方じゃない。
席に戻ったら私の席の隣にさっきまで裕の向かいに座っていた宮内くんがいた。
「あ、Aさん。
隣すいません。」
宮内くんは少し申し訳なさそうな表情をした。
彼はとても穏やかな雰囲気をまとった人。
最近仕事中良く話しかけに来てくれる。
仕事も頑張っているようだし、私は好印象を抱いていた。
「いいのいいの〜宮内くん今日はありがとね。」
「いえいえ。」
平然を装うけれど、まだ心臓はうるさかった。
落ち着かせるように飲みかけのビールを一気に飲む。
「Aさん、お酒強いんですね。」
「そんなことないよ。
もう酔うてるもん。」
「大丈夫ですか?
てかAさんって関西出身ですか?」
「そうだけど、なんで?」
「いや、さっき少し関西の訛りが…
あ、俺の同期の横山って奴も関西出身なんです。
あの奥の方に座ってる…」
そう言われて裕の方を見る。
もう戻ってきたみたいで、今度は別の女の子と親しげに話してた。
「へぇ〜、横山くんも関西出身なんだ。」
知ってるくせに。
なんならここにいる誰よりも裕のこと知ってるくせに知らないフリをする。
なんだ。
裕、全然気にしてなさそうじゃん。
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作者名:神八爽蘭 | 作成日時:2020年5月19日 8時