迎えに来たよ、監督生。

ごく普通の日常に ページ2

．



「ここはさっきの応用で＿＿＿＿＿＿」



7月中旬。

開けた窓の外から聞こえる蝉の声と、暑いと唸っている生徒達。
Aは眠そうに欠伸をして、大して興味もない先生の話をシャーペン片手に聞いていた。

先生が話すのをやめて黒板を向くと、教室が静かになる。
目を閉じれば木々の擦れ合う爽やかな音と、黒板に当てられたチョークの音が心地よかった。


周りを見れば首をカクカクさせながら必死に睡魔と戦っている生徒がちらほら見える。
既に諦め、机に突っ伏もしくは教科書を立てて寝ている生徒もいた。





そんな、ごく普通の静かな日常。





＿＿＿＿これが、数時間後を境に壊されるなんて思いもしなかった。




＊




「さっきの問題分かった？」

「全然！あれ答え何なの？」

「それが私も分からなくてさぁ」



退屈な授業が終わり、友達と席を囲んでそんな会話を交わす。
話は友達･･･真衣子(まいこ)のそう言えばさ、と言う発言から夏休みの話題に変わった。


「明日からでしょ、夏休み。29日暇だったらさ、一緒にどっか行かない？」

「行きたい！」


Aはわっと顔を明るくして、真衣子の発言に頷く。


「じゃ〜プラン立てよ！」


真衣子は優しく笑い、ポケットの中からスマホを取りだした。


「どこ行く？」

「スイーツ巡りとか？それとも海？」

「どっちもいいかも」


迷っちゃうね、なんて笑い合って、2人は次の授業が始まるまで会話に花を咲かせていた。

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