・ ページ9
｢ぎゃー！！！｣
友達とのダンスレッスンが終わり、帰宅した。
鼻歌を歌いながら部屋を掃除するぶーは、ほんっとに機嫌が良さそうで、気持ちがぶち上がり過ぎて目の前を通る私にも気付かない。
いつもだったら、すかさず｢おかえりっ！｣ってでっかい声で挨拶してくれるのに。
少し寂しい気持ちのまま、沢山汗を流した身体を綺麗にしようとお風呂場へ向かえば、
真っ暗な脱衣所の中で、ベンチに腰掛け、ぐったりと壁に身体を預けるおにぃが。
｢びっくりしたじゃん！いるならいるっていってよ！てか、なんで真っ暗にしてるわけ？いたずら？｣
頭より先に動く口。
おにぃはそれに顔を顰めている。
｢なに？しー、どーした？｣
モップ片手に脱衣所に駆け込んできたぶー。
｢おにぃが真っ暗にしてるから気付かなくて、心臓止まるかと思った！｣
半分怒りながらそう訴えると、
｢あれ、おにぃ、もしかして、頭痛い？｣
持っていたモップを私に手渡し、おにぃのそばにひざまずくぶー。
｢やだっ、、絶対そーじゃん。ごめん、おにぃ。声大きかったよね？｣
おにぃの顔色の悪さに、今頃気付いた私。
この人、月に1回くらいの頻度で、動けなくなるほどの頭痛発作を起こすから、気を遣わないといけないんだよね。
なのに、気付けなくて、しかも、悪化させるようなことしちゃって、悔しい。
明日文化祭だからってものあって、周りがよく見えてなかった。
ぶーによって寝室に運ばれていったおにぃ。
私は氷枕と飲み物を用意し、おにぃが寝ている部屋に向かう。
ものすごく暗めな明かりがついていて、その明かりの中でぶーが、おにぃの看病をしている。
ベッド横には頭痛薬の殻。
横向きに寝転ぶおにぃの口元にはビニール袋。
おにぃの細っこい左手は、ぶーの大きな手に包まれていて、吐き気軽減のツボをひたすらに押されまくっている。
大好きなおにぃがこんなふうに弱々しくなるのはとてもじゃないけど見ていられない。
｢おにぃ、頭浮かすよ｣
痛みで唸るおにぃの頭を少し持ち上げ、タオルを巻いた氷枕をその間に入れる。
｢しー、お前明日ステージ立つんだろ？肌が荒れちゃうとアレ(荒れ)だから早く寝な！｣
かっこいいのかかっこ悪いのかよく分からない言葉を並べ、ウインクをキメたぶー。
そうだね、今日はぶーの言う通りにしてみようかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 159人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
賞味期限(プロフ) - ちえさんさん» ありがとうございます！兄弟設定のお話大好き人間なんで、はじまりの年は結構お気に入りなんです！続編的なもの書いてみようと思います！ (2023年2月5日 7時) (
レス) @page34 id: e5602ed7e0 (このIDを非表示/違反報告)
ちえさん(プロフ) - はじまりの年、とても素敵なお話でした。この設定で長いお話も読んでみたいなぁ、なんて思ってコメントしました。作品、いつも楽しく拝見しています。 (2022年12月22日 8時) (レス) id: 94c3edab09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：賞味期限 | 作成日時：2022年11月5日 1時
