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｢じゃあ…私帰るね｣
少年に手を振り、帰ろうとする。
だが、少年は向日葵についてきた。
｢同じ方向なの？帰るとこ｣
｢…帰り方、分からない｣
｢迷子？｣
｢違う｣
少年は顔を歪めた。
泣きそう…。
｢そうじゃ、ない…｣
家で何かあるとか？
…虐待？
向日葵は少年の手を握った。
｢交番に行こう？｣
｢意味ないと思う…｣
否定はしなかったので、向日葵は少年と一緒に近くにある交番に入っていく。
向日葵達に声をかけてくれたのは優しそうな男性だった。
｢あのー…｣
｢どうしました？｣
｢この子が、帰るところがないって言ったんです｣
｢この子、とは…どの子かな？｣
｢え、ここにいるじゃないですか｣
自分と手を繋いでいる少年を指差しながら向日葵は教える。
｢んー…。勉強で頭が疲れてるのかもね。よく寝なさい｣
｢そんな…｣
少年は私以外に見えてないの？
何それ…。
｢…ありがとうございました。すみませんでした｣
｢いいえ。頑張ってね｣
｢はい｣
少年と交番を出ると、少年はボソッと呟いた。
｢やっぱり意味なかった…｣
｢私以外に、見えてないとか言わないよね？｣
｢…あと一人、僕のこと見えるかも｣
｢誰？｣
少年の口が動く。
｢松下、海斗｣
アイツ！？
向日葵の家が見えてきた。
どうしよう、この子。
その時少年のお腹がなった。
｢お腹、空いた｣
｢私の家に…来る？｣
向日葵はいつの間にか、そう声に出していた。
｢…いいの？｣
少年は向日葵を見上げる。
｢いいよ｣
他の人には見えてないし、お母さん達に怒られることはないから。
｢来る？｣
少年はコクッと頷いた。
家に入る前に私は｢あっ！｣となり、慌てて少年を見下ろした。
少年の目線に合わせて向日葵もしゃがみこむ。
｢あの…失礼だとは思うんだけど、幽霊じゃないよね？｣
｢まだ死んでない！｣
少年はさすがにムッとなったようだ。
じゃあ何で他の人には見えてないの？
疑問が生まれたが、向日葵は気にしないように家の鍵をあけた。
｢ただいまー｣
｢おかえりなさい…｣
落ち込んでる暗い声。
そういえば、朝のこと忘れてた！
｢ごめんね…まだ夜ご飯何にするか決めてないの。オホホ…｣
｢何あのおばさん…｣
向日葵の隣で少年はお母さんを指差しながら言った。
少し引いてるようだ。
｢お母さん、私、手作りパンが食べたい気分だな｣
途端にお母さんの声が明るくなった。
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作者名：みあゆい | 作成日時：2019年12月5日 12時
