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その晩、カゼは何か聞こえた気がして目が覚めた。
隣で寝てる來夢をみる。
來夢は額に汗をかいていた。
うなされている…。
「來夢」
体を揺する。
「ん…」
來夢の目がうっすらと開いた。
「どうしたの…?」
寝起きの声を出しながら、來夢は聞いた。
「うなされていたから、起こした」
來夢は「あぁー…」といいながら苦笑する。
「悪い夢だったからなぁ」
「どんな?」
來夢は言おうか迷ってるように視線をさ迷わせた。
「そのー…、俺の家族が夢にでてきて…」
「嫌いなのか?その家族が」
「ううん…嫌いじゃない。好きだった」
來夢は「俺は余り好かれてなかったけど…」とつけ加える。
「お父さんとお母さん、教師だったから、勉強が出来なくて、運動も苦手…、すごい怒られてた」
先生を仕事としてやってる家庭では、よくあることだ。
「夢の中で怒られてるのか」
「違う違うっ」
來夢は首を振る。
「俺の家、大家族でお母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、お姉ちゃん、弟、妹の皆で暮らしてて…。でも、1年前に皆、死んだ…」
來夢は天井の小さいシミを見つめる。
「急に…、順番ずつ。さっき言った順で、一日に一人死んでいった。俺だけは、何故か死ななかったんだ」
來夢は目を閉じた。
口が動く。
「夢ででてくる…。皆が俺を囲んで、『何でお前が生きてる』って、問い詰めてきて…」
うなされていた原因が分かり、カゼは來夢の髪をクシャとかき回した。
「わっ、え、何?」
「もう大丈夫だから、おやすみ…?うなされてたら、起こしてあげるから」
來夢は眉を下げた。
「迷惑かけちゃう…」
カゼはクスッと笑った。
「迷惑じゃないから、寝な」
「…うん」
カゼの声のトーンが優しく、來夢はすぐに眠りについた。
來夢はその夜、夢でうなされることはなかった。
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作者名:みあゆい | 作成日時:2019年12月6日 17時