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｢なぜ｣
來夢はカゼの目を見つめながら言った。
思ってることを、正直に伝えた。
｢カゼに惹かれてるんだ…。いや、惹かれてるのかは分からないけど。カゼの独特な雰囲気…空気。それに何故か、会いたい…一緒にいたいと思ってしまうから…｣
カゼは驚いた。
自分も同じだったからだ。
ただ考えないようにしてただけで。
誰かに対しこういう感情を持ったことはない。
恋愛感情じゃない。
來夢もそれは同じだろう。
あの時、扉の前に倒れてた青年を無視して通りすぎようとした。
だが、勝手に足が動かなくなった。
止まった。
青年から感じる独特な空気感に引き寄せられ、声をかけ、助けてしまった。
カゼは來夢に向かって叫んでいた。
｢ダメだ！お前は帰れ！來夢はここでは生きれない｣
こんな…人も殺せないような純粋な來夢には、裏の世界は…。
｢いやだ！！｣
來夢の目から涙がこぼれた。
｢帰れってどこに？｣
｢表の世界だ｣
カゼはスパッと答える。
｢表の世界とここの何が違うのか俺には全然分からない｣
｢全く違う。多少の犯罪はあるとしても、表の世界はここと比べて全然平和だ。幸せに暮らせる。けど、ここは違う。裏の世界は毎日必ず誰かが死ぬ。常に殺しあい。法律なんて、ここでは無いのと同じだ｣
カゼの目がスッと細められた。
｢俺はいろんな奴等から恨みをかっている。全員、俺を殺したくてウズウズしている。絶対に気は抜けない。普通に考えて分かるだろ。常に殺される危険と隣り合わせの俺と行動するのはマズイって。一緒にいたい？ふざけんな！｣
來夢の涙が止まる。
カゼの目を見つめる。
｢カゼ。俺ね、いろんな人から変わり者だってよく言われるんだ｣
｢だから？｣
來夢はへらっと笑った。
｢普通じゃないってこと｣
｢…は？｣
カゼは拍子抜けした。
まさかそんなこと言われると思ってなかったのだ。
來夢は頭を下げた。
｢お願いします。迷惑にはならないようにする。だから…カゼと一緒にいたい｣
…何を言っても、聞いてくれないだろうな。
俺の意志で動いていいのか？
來夢は絶対に帰すべきだ。
だが、それはカゼの意志じゃない。
状況を考えた上での、当たり前の意見だ。
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作者名：みあゆい | 作成日時：2019年12月6日 17時
