ハロー！スプリング ym×in

一生パシリで勘弁してください ページ7

「…えっと」

「うん、ゆっくりいいよ」

「俺、失恋、してさ…」


自分で言ってて虚しくなってきた…。
泣きそうになるのを我慢する、これ以上山田に迷惑かけられない。


「失恋？ふられたの？」

「いや、違くて、その人に彼女できて…」

「……………彼女？」


言ってしまってから、我に返った。
あ、やばい、とんでもない事暴露してしまった。


「…相手、男なんだ？」


だよね！？気付くよね！？
女の子が好きなら普通「彼氏ができて」っていうもんね！？


「しかも、最近彼女できたのって…」

「ああぁぁ！！言わないで！！分かった！！なんでもする！！だから聞かなかったことにして！！」


テンパリまくってこんな事を言ってしまった俺は、のちのち後悔する事になる。

山田はにやりと笑った。


「……へ？」

「なんでもする、そう言ったね？伊野尾ちゃん」

「う、うん…」


テーブル越しに話していた山田はわざわざ俺の方まで回ってきて、真横まで来た。
状況はいまいち掴めないけど、思わず息を呑む。


「じゃあさ、俺のお願い聞いてよ」

「な、な、な、何？？？」


なんだなんだなんだ！！
え？殺される？？海に沈められる！？

せめて、一生パシリくらいで勘弁してください…！



「俺と付き合って、伊野尾ちゃん」

「………はえ？」



オレト、ツキアッテ、イノオチャン？？？？
何かの呪文かな？？



「ごめん、よく聞こえなかった…もう１回…」

「俺と付き合って、伊野尾ちゃん」



き、聞き間違いではない事は分かった。
山田は真っ直ぐこっちを見て、俺の返事を待っている。


「え、えと…」

「……だめ？」

「だめっていうか…」


ごにょごにょ言っていると、山田はふふんと口角を上げた。


「無理って言うなら仕方ないなぁ！！うっかり口が滑って言っちゃうかも、大ちゃんにとかに！」

「付き合います！！よろしくお願いします！！！！！」


俺の口が反射的にそう言った。

……大ちゃんに言われたらまずいんだよ。
クリスマス目前に彼女できて今浮かれてるからさ。

俺の気持ちなんて知ったら…心配するじゃん、あの人。

思わず目の前にいる天使の仮面を被った悪魔を睨みつけた。


「お前ぇ、何企んでんだよぉ…」

「別になんも企んでないよ？」

「嘘つけ！俺なんかと付き合ってなんの得があんだよ！」


俺の肩に手を置いた、と思ったらがっちりと掴まれて山田側に引き寄せられた。
国宝級の顔とありえないくらいに近い距離で見つめあっている。

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