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クジラ病棟の或る前夜(骸狐作) ページ2

「ねぇ、最後に話をしよう」
灰色のくだが繋がった君の口元。
「そうだ、少し頼りないような、君の下手な歌好きだったよ」
「…」
君から返事はなかった。
スッと手を伸ばして君の髪に触れる。
「ごめんね…僕のせいで…!」
 …あれ?…眠たくなってきた…
急に睡魔におそわれ、僕はそのまま眠ってしまった。




青い空、果てしなく広がる草原…そのなかに僕と君はいた。
 これは…8回目のデートの…じゃあ、今僕が見ているのは…
 昔の僕たち…。
A『わぁ〜、すごい』
  『ああ…幻想的だな』
 <あの時>
風に草木が揺れ、鳥たちの声が聞こえる。
  『なぁ、A』
 <なぜ>
  『…?A?』
 <気がつかなかった>
  『A!!』
その場にうつ伏せに倒れる君。
静かだった草原に、サイレンの音が鳴り響いた。
 <何で!>
今まで見ていた光景が黒く塗られていく。
 「待って!」
 今さら手を伸ばしたってもう…遅い。
世界が完全に黒に染まる。
ビキッ…
ガラスが割れたような音が頭上から聞こえた。
 <あぁ…>
涙が頬を伝って地面に落る。
地面から涙が溢れ出て、すぐに膝あたりまでを覆った。
ガシャアン!!
亀裂が入った空が落ちて大きな音をたてた。
どこまで続くか分からない闇の中で僕は溺れた。
 <君はもうじき…>


…ハッ!
「…寝てたのか」
君が息をしていることを確認し、安堵する。
そして君の手を優しく握った。
 前は、笑って握り返してくれた…
その事を考えると再び罪悪感に苛まれた。
  「僕が気がついていればこんなことには…」
彼女は心臓病だ。早く診察を受けていれば治る病気だと医者から言われた。
ピクリと君の手が動いた。
A「ぁぁ…うぅ…」
  「!?…A!?」
Aは突然苦しみ始めた。
急いでナースコールを押す。
  「A!!死なないでくれ!!」
A「ぁ…ないで…」
  「A…?」
A「君に…愛されて…生きて……これたこと、だけで…幸せに思うの………だから…なか…ないで……」
握っていた手が冷たくなっていく。
  「A!!」
医者「今すぐ緊急手術を行います、すみませんが離れてください」
看護師「AさんAさん応答無しです」
Aは看護師達に運ばれて部屋から居なくなった。
僕は、ガクリと膝を折ってその場にへたれこんでしまった。
窓から涼しい風が僕の頬を撫でた。

二度と季節は巡らない。
二度とページはめくられない。
水も吐いてしまう花束は
眠ったまま…

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涼村梓乃(プロフ) - 骸狐さん» ですね! (2014年3月30日 11時) (レス) id: 6d000a4c78 (このIDを非表示/違反報告)
骸狐(プロフ) - 涼村梓乃さん» そうなんですよ…でも、また帰って来るかもと言っていたので待っています!! (2014年3月30日 10時) (レス) id: b10765b4e3 (このIDを非表示/違反報告)
涼村梓乃(プロフ) - トーマさん、引退されたんですよね… (2014年3月26日 20時) (レス) id: cb675f20d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:骸狐・木更津 伯 x他1人 | 作成日時:2014年3月21日 23時

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