おはよう【牛島若利】 (ページ3)

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授業中、先生の話を聞いてるふりをして準備した白紙に彼を描いた。

良すぎる姿勢、がたいの良い体格、真っ直ぐな瞳、思い出せるだけ思い出して描いた。

ちゃんと特徴を捕えられていたのか、友だちの小山由利が顔を覗かせ嬉々とした声を出す。

｢え？これってもしかして牛島？｣

牛島。どこかで聞いたことがあるような、ないような……。

でも彼女はよく私の描いたものを当てるからたぶんその牛島って人なんだろう。

｢知り合い？｣

そう訊けば彼女はギョッとした目でこちらを見る。

｢知り合いも何も、有名人だよ。もしかして、知らずに描いたの？｣

そうか彼は有名人なのか。

だからどこかで聞いたことがあると思ったんだ。

｢あの人俳優か何かモデルとかやってるの？｣

これは失礼に当たるが私が見た限りモデルという感じではないし、あの無表情さからしても俳優というイメージも無い。

体格の良さからしたら芸能界と言うよりは、スポーツマン。

彼女は｢マジか｣と聞こえてきそうな呆れた顔をしてこちらを見る。

｢さすがA。自分の世界だね｣

言葉の意味がわからず、とりあえずありがとうという。

褒められてないことはなんとなく分かったし、少しカチンときたが、もう高校三年生だ。いちいち態度に出しやしない。

それに、彼女も彼女なりに言葉を選んだのだろう。

そうだと思いたい。

｢牛島はバレーボール選手だよ。ユースにも選ばれてる｣

｢ユース？｣

私はバレーについてほとんど知らない。

そんな私に、バレーに詳しい彼女はユースがどのようなものなのか丁寧に教えてくれた。

正直バレーなんて興味が無いけど、彼がすごい人だというのはよく分かった。

｢だから体格良いんだ。納得｣

｢もー、ほんとAはそういうところしか見ない｣

そういうところというのは、きっと体のパーツのことだろう。

でもそこに魅力を感じるんだから仕方ないじゃん。

そう言って見せれば、はあ、と小さくため息を吐かれる。

｢一度でいいからさ、そういうの無しで相手のこと見てみたら？｣

｢相手って誰？｣

｢ん～例えば牛島とか｣

紙に描かれた彼を指さされる。

真っ直ぐな姿勢、瞳、綺麗だったな。

悪い人じゃないだろうし、彼女の言うとおりにしてみようかな。

なんて気持ちからか、私はいつの間にかまたあの廊下に立っていた。

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