おはよう【牛島若利】 (ページ16)

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数日経っても未だに彼に抱きついた感触が残ってる。

女子の華奢な体とは違う、男子のゴツゴツしてて大きな背中。

そんなことで頭がふわふわ浮いていて、目の前の彼女もある意味意識がここではない、別の場所へ言っている気がする。

彼女の大きな目は、普段は可愛いのにたまに鋭く怖い。

たまにあるんだ。

どこか一点を鋭く見つめてることが。

｢由利｣

名前を呼んでやっといつもの可愛らしい目になる。

｢ん？｣と小首を傾げて微笑む姿はとても可愛らしく、先ほどの殺気溢れる姿が嘘のようだ。

でも、嘘じゃないし、幻でもない。

｢また何か考えてた？殺気立ってたよ｣

｢え、嘘。殺気立つほどじゃ…………うーん｣

いつもなら｢普通に悩んでただけだよ｣とか｢怒ってないんだけどな～｣って言うのに、今日は違う。

今回は何かに対して怒ってたってこと？

｢私に対して怒ってた？｣

恐る恐る聞くと、彼女は｢Aに対しては怒って……ない、かな？｣なんて曖昧な怖い返答をした。

私何か怒らせることをした？

あ、もしかしてこの前の男子バレー部の活動してるところへ付き添いさせたから？

｢…………この前付き添いさせたこと怒ってるの？帰りに男子が言い寄ってたみたいだし｣

顔色を伺うように聞くと、彼女は大きな目をさらに大きく見開く。

｢それは別に良いよ。……けど｣

｢けど？｣

｢前に昼休みに私他クラスの女子に呼ばれたことあるでしょ？それで特別教室棟まで連れてかれて、実はね｣

男子バレー部を見学に行った翌日のこと、凛桜って人からどんな質問を受けたのか、そして帰り際に頼まれごとをされて断ったこと、由利はときにイライラしながらも話してくれた。

｢普通、聞くならAに対してじゃない？｣

確かにそうだ。

けど、そんな理由、あからさまだ。

｢由利は可愛いからね。ライバルならさっさと手を打っておこうと思ったんでしょ｣

由利なら面倒。

もし私がライバルだと分かっても、敵じゃないと思われたると思う。

けど、できるだけ有利にことが進むようにするために彼女に手伝うよう頼んだ。

そう、いつものように答えれば彼女もまた、いつものように眉間にシワを寄せている。

けど、いつもと違ったのは、その後に言う言葉だった。

｢Aが何もしないなら、私はAの手助けもしないから｣

そう言い放ち、彼女は｢予鈴が鳴る｣と言って自分の席に戻った。

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