突然出会った王子様 【染谷勇次郎】

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(貴方side)







「はぁぁーー」



「どうしたのーAちゃん。ため息吐くと幸せが逃げちゃうわよー」



「……なんか気分が晴れないんです。青田さん、なにか明るい話ないですかー…」



「この雑誌の俳優がカッコいいのなんの……」



「……何回目ですか、それ。っていうか、その雑誌何年前のですか……」



「何年前だっけ。…二年？三年？ぐらい前かな」







そう言いながら店長、もといお姉ちゃんの友達である青田さんは雑誌をめくっている。



推しの俳優さんがいるらしく、今現在めくっている雑誌はその俳優さんの特集ページがあるらしい。



私は全くと言っていいほど興味はないが。



カフェにはいろいろなジャンルの雑誌が置かれている。



少年漫画系から少女漫画系


ファッション系や情報系


1つの芸術に特化したものもあり、かなり種類が豊富



これがお客さんには好評らしい。





『お客さんに喜んでもらえて私も読める。まさに一石二鳥ってやつよ！』ってこの前青田さん、言ってたな





週刊のものや月刊のものが多いけれど人気のものは、ずっとあるらしい。



雑誌の話になったので雑誌の本棚を片付けようと思い本棚に向かう。



数冊抜き出して出版社や同じ雑誌でまとめたり高さで揃えたりしていると、ある一冊の雑誌が目に入った。





『THE 歌舞伎』





そう書かれている表紙には顔を白く塗っている着物姿の人。



すぐ横には『特集 染谷光一郎』という文字。





……染谷？



勇次郎と同じ苗字、だな



『染谷』って、珍しい苗字じゃないかな





少なくとも私は彼以外に『染谷』という苗字の人を知らない。







『歌舞伎とかやっとる』







何故か、前にひよりんに彼のことを聞いたとき教えてもらったことが頭の中で思い出された。



なんだか妙に気になってその雑誌を開く。



『特集』と書かれているページにはあの日見たおそらく彼の弟君であろう深い緑色の髪の男の子が載っていた。





『染谷の芸・その伝統を……』





情報がまばらで頭の中でうまく整理ができない。



けれど何故か。



胸騒ぎが、する。



　

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