winter129 痛いくらいの優しさに ページ32
☆Aside
爛々と輝く太陽が世界を包む。
真っ白なドレスを身に纏い、履きなれないヒールをコツコツと鳴らす。
これから始まるのは、別れの儀式。
涙花病に侵された王族と、国民が会うことができる最後の時。涙花病の存在を明かすことはできないから、少しだけ民に嘘を吐くことになってしまうけれど。
この式典を境に、国民の前から姿を消さなくてはならない。
きっと歴代の王女たちも、私と同じ気持ちだったのだろう。
病に侵され弱っていく姿を、民に見せたくはない。
コツコツ…コツ…コツ……
歩みを進めるにつれ、高鳴る心臓と近づいてくる喧騒。
そして、光が差し込むバルコニーへと出た。
『王女だ！』
『Aさまー！』
途端に歓声が沸き上がる。
バルコニーには、先に到着していた父上たちが待っていた。
キース「A」
私の顔を見て、優しい顔で頷く３人。
私も微笑みながら頷いて、バルコニーの手すりに手を置いた。
『……』
足がすくむ高さと、数えきれないほどたくさんの群衆。
この中に、イザナやゼン、オビ…皆もいる。
覚悟を決め、すっと片手を挙げる。
訪れた静寂の中、深く息を吸って声を張り上げた。
『今日は私のために足を運んでくれてありがとう』
『話したいことはたくさん、それこそ星の数ほどあるけれど、まず、これだけは言わせてほしい』
さっきのオビの顔がちらつく。
私が背中を向けた瞬間泣き出した人の顔がちらつく。
優しく、花が風に揺れるようにこう言った。
『泣きたいときは、泣きなさい』
『人は楽しい時に笑顔を咲かせ、悲しい時に涙を流す生き物でしょう？
悲しいのに、寂しいのに、笑ってどうするの』
どうか、私のために嘘をつかないでほしい。
自分を殺さないでほしい。
だけど
『だけど……私のために笑ってくれてありがとう。
痛いくらいの優しさに、たくさんの愛を感じたよ』
「Aさま…」
「……っ」
『皆が知っている通り、私はもうすぐこの世界から消えてなくなる』
『この国のりんごや、パンやお魚が食べられなくなったり…みんなの笑顔を…見られなくなるのは……っ…残念だけれど……』
寂しさに、涙が溢れてくる。
民の前で泣くなど、一年前の私では考えられなかった。
だけど、オビと出会って私も変わった。
感情を押し殺してばかりでは、自分自身が死んでしまう。
．
winter130 幸せの形→←winter128 無理しないで
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ルルコ - 大・号・泣！！ ほんとにタイトル通り涙の雨です！それも大雨！最後の宝探し(手紙とお花)なんて神ですね！別の意味でさらに感動しました (2021年12月15日 1時) (
レス) @page50 id: 71a021f1b6 (このIDを非表示/違反報告)
purupru(プロフ) - はまってしまい、一気に読みました。涙雨3に入ってからは涙がでて止まりませんでした。更新再開を楽しみにしてます^ ^ (2018年11月6日 20時) (レス) id: bc972e56cf (このIDを非表示/違反報告)
れ - 一気に読んでしまいました。涙がとまりません。また、物語がスタートするの待ってます。 (2018年10月13日 17時) (レス) id: 3522cc0a39 (このIDを非表示/違反報告)
かりそめの蘇生(プロフ) - 更新再開してくれて嬉しいです！完結まで楽しみにしてます！ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 4709ebaabe (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - クラリネスで涙花病の薬つくってほしい (2018年5月15日 14時) (レス) id: 1e69e1c4b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミネコ | 作成日時：2016年12月9日 20時
