# ページ8
治は無視を決め込もうとする。が、何を思ったのか適当にゴソゴソとポッケをまさぐり、
クラッカーをダンボールの中にそしてはんかちを子犬の上にかけた。
ありがとう、と子犬はお礼を言うようにか細い声で一つ鳴いた。
「…君の為じゃないから」
ただ、Aが犬が好きだからやってあげただけ。
Aが好きじゃなかったら僕もあの犬を助けるだなんてしないから。
ふわりと自身のロングコートを脱いで段ボールの上にかぶせてやったのだった。
*
「っおい!大丈夫かよ太宰!」
ふらふらとした足取りで治はポートマフィアへと向かった。
そんな彼の元に向かったのは治の相棒であり大っ嫌いな相手でもある中原中也。
「っるさい…ほっといてくれ給え…」
ほんのりと頬が赤くなり虚ろな目でふらふらと歩く治。
誰もが治を一目見て風邪だと分かった。
「…ねぇ中也。どうして…」
治がそこまで言いかけた。
しかしふわりと体が浮き浮遊感と気持ち悪さが体を血のように巡る。
バタリと音を立て太宰は倒れてしまった。
*
ふわふわふわふわ。
嗚呼、ここは何処なんだい?
きっと天国だろうか。嗚呼やっと僕は死ねたんだね。
さぁ早くAの元に行こうか。きっと彼女は喜んでくれる。
僕のA。今行くから待っててくれ給え。
「Aっ!」
僕の目の前にはA。大好きな大好きなA。
僕は野原を駆け出す。まるで主人を追いかける犬のように。
自分を犬に例えるなんて小癪だけど今はそんな事どうでもいい。
僕はひたすら走る。走って走って走って。
Aと僕の距離は目と鼻の先。
だけれどAの元に全然いけない。どうしたんだろう?
走って、走って、走って。
「治」
ふわりと笑った。彼女が振り向いた。愛おしそうに僕の名を呼んでくれた。
まるで花が咲いたように笑う彼女に僕の胸は大きく高鳴る。
「じゃあね」
っダメ!
手を伸ばす。されども彼女には届かない。
いかないで。ダメ。いっちゃだめ。一人にしないで。
*
「おっ、目ェさめたか?」
治がばさりと起き上がった。
はぁはぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。
「っおい、大丈夫か…」
いつもとは大分雰囲気の違う治に中也は口を開くが治に遮られる。
「ねぇ、A。Aは何処?」
治の瞳には寂しさと悲しさが見え隠れしていた。
今まで以上に冷えた瞳をしていた。
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嘘吐き姫(プロフ) - 中也さん、今度は戦国武将ですか…敵がバッサバッサですね(笑) 名前っぽいペンネームも素敵ですけど、双黒尊い…って、率直&ドストレートで、私は結構好きです!名前変わっても双黒尊い…さんはM・T(マイ・天使)です(( (2019年11月8日 19時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
双黒尊い…(プロフ) - リアさん» それは大変失礼いたしました。私がこのCSSを気に入っているという諸事情であまり変えたくないのです。本当に申し訳ございません。もうお知りになっているのかはわかりませんけれど右側にあるCSSという所を押せば、普通のに切り替わりますよ。 (2019年11月8日 16時) (レス) id: f17b921f9b (このIDを非表示/違反報告)
リア - あの小説のほうはすごく面白いのですが背景が桜の花びら、字が白なので大変読みにくいです壁紙を変えてください (2019年11月8日 16時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - 双黒尊い…さん» リクエストください(笑) (一つ前のコメント、レスつけそびれちゃいました、すみません!) (2019年11月6日 22時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リクエスト消化、ありがとうございました!びびりみたいなコミュ症みたいな夢主ちゃんめっちゃ可愛かったです(眼力) あと、「俺ってそんなに怖いのか」っていう中也さんの心の叫びにちょっと笑っちゃいました(笑)リクエスト停止を解消したら、是非私の作品にも (2019年11月6日 22時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:双黒尊い… | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kouki69632/
作成日時:2019年10月22日 19時