天下の双黒様だって彼女様には敵わない 【双黒/短編集】

#コミュ障補佐/中原中也/リクエスト ページ30

俺は、今首領室に向かっている。
首領になぜか呼ばれ、なにかやらかしてしまったか、と頭の中で考えるが
一切心当たりはない物で困ったものである。

「首領、中原中也です」

こんこんとドアを二回叩く。
いつも聞こえてくるはずの声が聞こえないので頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。
遂に、あの首領が幼女趣味をおやめになられたか…？と考える。まぁ、それはないだろう。
やめてくれたらこちらも万々歳なのだが。

「中也君、入り給え」

首領の威厳のある、聞きなれた声が耳に残る。
ギィと開ければ、いつもいるはずのエリス嬢がいない。その代わりに首領の隣に一人の
女が立っている。びくびくと怯え、若干綺麗な青色の瞳には涙が溜まっている。
必然と、モルモットが思い浮かんだ。いつもモルモットは怯えてるからな。

「中也君もそろそろ補佐が欲しいだろう？」
「？ええ…」

まぁそりゃあ補佐は欲しいものだ。
何を言い出すと思ったら、補佐が欲しいか、と聞いてくる首領に一つの仮想が浮かんだ。
まさか、このさっきからびびっている女が俺の補佐…？

「A君、自己紹介をしてくれないか」
「…ひっ…ひゃぃぃ……」

嚙み嚙みだが、りんと鈴が鳴ったような綺麗な、聞き惚れるような声で女は自己紹介を始めた。

「、う、うちゅ、兎月Aでしゅっっ…！！」

何度も噛むおん…兎月。
やってしまった、そんな言葉がにある程絶望した顔である。

「あぁ、A君はコミュ障らしいんだよね。とりあえずコミュ障を治そうかと思って
中也君の補佐に推薦したんだけれど」

どうだい？
首領は、幼子に聞くような声色で言ったが何処かいいえとは言わせないような雰囲気が漂っている。
まぁ、役に立つのであれば良いだろう。役に立たぬのであれば捨てるのみ。
情なんてかけている暇なんてない。

「良いですよ」

様子見と行こうか。

首領室を後にして、兎月と共に歩いているのだが…
全然こいつは喋らねぇ。
取り合えず俺が一方的に、ポートマフィアについて喋っているのだが
絵面だけだとただの寂しい奴になっちまう。変な噂なんか流れたらたまったもんじゃねぇ。

「〜〜で、なんかあれば取り合えず俺の名前だしゃ何とかなるからな」

一応これでもポートマフィア幹部なのだ。
自分で言うのもあれだが強い方だとは思う。

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